最低賃金の引き上げは日本経済再生の第一歩2012年5月24日 ○厚労省の『賃金構造基本統計調査(2009年)』の対象労働者(回収ベース1587万人)を前提に、最低賃金を、全国一律で時給1000円に引き上げた場合の経済効果を試算した。
○生活保護世帯が急増し、財政負担が国・地方合わせて約3兆円に達しているが、被保護世帯の12.9%は世帯主または世帯員が働いている世帯である。最低賃金を時給1000円に引き上げれば、この人たちを生活保護から解放することが出来、それに伴って約3800億円の財政支出削減となる。 ○最低賃金引き上げの対象となる低所得者層は、収入増加分の約70%を消費し、内需(家計消費)を拡大するが、高所得者層の消費は50%強にすぎず、最低賃金の引き上げは、内需拡大効果が大きい。また、それによって誘発される国内生産は、商業、不動産、食料品、教育、通信、飲食店等々の中小企業分野により強く表れる。したがって、最低賃金引き上げによる中小企業の生産コスト増を心配する声があるが、積極経営の立場に立ち、当面の苦しさはあったとしても、最賃引上げに賛同し、労働者と力をあわせて、単価引上げや取引慣行の改善、中小企業支援策などを大企業と政府に対し、要求していくべきである。 ○日本経済は、20年を越える長期不況が続いている。その原因として内需不足(デフレギャップ)による価格低下、円高による輸出採算の悪化と安値輸入品の急増、産業空洞化などが言われているが、それらは、目先の利益ばかりに目を奪われてリストラ競争に明け暮れてきた日本企業、それを推奨した新自由主義的経済政策、煽りたてたマスコミ等に原因があり、このままでは、やがて日本は“高度に技術の進歩した貧困国”になりかねない。最低賃金の時給1000円への引き上げは、日本経済の方向転換・再生の第一歩となるものである。 ○最低賃金を時給1000円に引き上げたとしても、該当する労働者の賃金は、月平均12.2万円から14.6万円へ2.4万円アップするに過ぎない。日本の企業が民事再生法による18歳単身世帯の最低生活費の全国平均18万0245円や生活保護基準の全国平均15万0157円程度の賃金を支払えないはずはない。 ○最低賃金を時給1000円に引き上げるためには、企業全体で6兆5841億円の原資が必要になるが、その額は、2009年度末における内部留保441.0兆円の1.49%、大企業のみで負担するとしても、内部留保257.7兆円の2.55%にすぎない。 |