【試算】安倍「雇用改革」で労働者の賃金42兆円減 (全文→PDF)
2014年2月 安倍内閣は規制改革会議、産業競争力会議などを中心にして「雇用改革」を推進しようとしている。その目玉とされているのが、「正社員改革」であり、「派遣労働の大幅な規制緩和」である。労働総研は、この「雇用改革」が労働者にどのような影響を及ぼすのかについて、労働者の賃金がどうなるのかという視点から具体的に試算した。 試算結果は、標記のとおり。試算の内容は、規制改革会議や産業競争力会議などで検討されている事柄にもとづいて、「正社員改革」に伴うケース――(1)「限定正社員」の導入による賃金減、(2)「無限定正社員」の導入による残業代減、(3)「無限定正社員」の選別・絞り込みによる賃金減の3つのケース、そして、もう1つの柱である「派遣労働の大幅規制緩和」にかかわっては、(4)非正規労働者の賃金減、(5)「限定正社員」リストラによる「派遣労働者」化の2つのケースについてそれぞれ試算した。その結果、賃金支払総額は42兆円も減少することが明らかになった(総括表)。 2 試算にあたっての基本的考え方 (1) 「正社員改革」については、規制改革会議雇用ワーキンググループの議論で、「無限定型の無期雇用も初期キャリアでは3割くらい」「中期キャリアでは限定型に移っていって、後期キャリアでは1割くらい」「限定型の無期雇用が大多数になる雇用社会」がイメージされていることをふまえるなど、現実に進んでいる議論を前提にして試算した。 3 結論 試算結果は、労働者の賃金が42兆円も減少するというショッキングなものとなった。安倍首相は、アベノミクスによって経済の好循環が実現すれば、労働者の賃金も上昇するかのようにいっているが、アベノミクスにもとづく「雇用改革」が断行されれば、労働者の賃金は上昇するどころか大幅に低下することになる。それは経済の好循環をもたらすのではなく、これまで以上の悪循環をもたらすことになる。 |