2018春闘提言
“アベノミクス”と対決し、大幅賃上げで経済改革を
2018年1月18日 労働運動総合研究所
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◆ 政府は「2012年12月に始まった景気回復局面が戦後2番目の長さになった」というが、過去5年間の年平均経済成長率は実質1.4%と世界平均の2分の1以下にすぎず、民主党内閣3年間の水準をも下回っている。
◆ 日本経済低迷の主因は賃金にある。2012年と4年後の2016年を比較すると、G7+韓国の8カ国の中で、日本だけ賃金が低下している。
◆ 安倍首相は、正社員の有効求人倍率が1.0倍を超えたことを“アベノミクス”の大きな成果と得意げにいっているが、それは、「接客・給仕」、「介護サービス」、「飲食物調理」等々、離職率が高く、常時求人をしても応募者が少ない職業が有効求人倍率を押し上げているのであり、求職者が多い「一般事務」や「その他の運搬業」は、0.3倍程度である。
◆ 2012〜16年の4年間に、企業の「売上高」は5.9%しか増えていないのに「経常利益」が54.7%も増えた。一方、従業員給与は増えず、また、「税引前当期純利益」が70.7%増えたにもかかわらず、「法人税、住民税及び事業税」の納税額は17.4%しか増えていない。その結果、「内部留保」が25.7%、123.5兆円も増え、国内需要低迷の原因となっている。
◆ デフレから抜け出すためには、賃金を引き上げ、需要を拡大しなければならない。にもかかわらず、法人税を減税し、消費増税を含む大衆課税を強化し、社会保障の切り下げを行っている安倍内閣の政策は、アベコベである。
◆ 第2次安倍内閣の4年間に、労働者の生活は明らかに悪化し、エンゲル係数が上昇するという、近年見られない現象が生まれた。
労働者の生活を第2次安倍内閣発足時に戻すだけで、6.7%、2万円以上の賃上げが必要である。そのために必要な原資は、内部留保の2.26%にすぎない。
◆ 収入格差が拡大し、高所得層は貯蓄を増やしているが、低所得者層、中所得者層とも貯蓄を減らしている。その底上げのために、最低賃金の大幅な引き上げが、とりわけ重要である。
◆ 「労働時間の上限規制」と「ホワイトカラーエグゼンプション」など安倍内閣の「働き方改革」は、多くの労働者に無制限の長時間労働とサービス残業(不払い労働)を強制する可能性が高い。「働き方改革」をいうなら、まず、「サービス残業の根絶」、「年休の完全収得」、「週休2日制の完全実施」および「非正規雇用の正規化」を行うべきである。
◆ 企業は常に他社や海外と競争しているのであり、自ら積極的に賃金の引き上げや労働条件の改善を行うことはない。したがって、労働者の粘り強いたたかいが必要である。近年、日本の労働運動は、すっかり戦闘力を失ったように見える。労働組合がその本来の目的を達成し、社会的責任を果たすために労働運動の再構築が必要である。 |