労働総研ニュースNo.161号 2003年8月
目 次 |
・2003年度定例総会報告 |
労働運動総合研究所2003年度定例総会(第15回)報告 |
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労働総研2003年度定例総会での挨拶労働総研への3つの期待全国労働組合総連合副議長
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ご紹介いただきました全労連副議長の西川です。 労働総研2003年の総会にあたり全労連を代表して連帯のご挨拶を申し上げます。 日頃より全労連そして日本の労働運動の前進に向けた調査・研究・政策活動、そして基礎理論の再構築にとりくまれておられる皆さんの活動に深く敬意を表するとともに、改めて感謝を申し上げるものであります。 早いもので全労連が結成され14年目を迎えます。14年という時間は、人間でいえば生まれた赤ちゃんがそろそろ高校生になる年齢であります。克服しなければならない多くの課題を残しながらも、全労連もいま1個の人格を形成しはじめていく段階に達し始めています。いまだ未熟ではありますが、14年のさまざまなたたかいの経験をつうじて、一定の社会的影響を持つ存在にまで成長し始めていることは間違いのない事実であります。 この間の歴史の流れは、ソ連・東欧の崩壊などを含め、世界とともに日本にあってもこの国の形をも変える、かつて私たちが経験したことのない激しい変化を伴うものでありました。 これらの激動は、好むと好まざるとにかかわらず、労働運動の分野にも大きな影響を与えてきました。 グローバリゼーション、規制緩和、産業の空洞化、これらにかかわりリストラ、雇用形態の流動化、総人件費抑制政策に伴う賃金の切り下げ、さらに賃金決定の個別化と成果主義賃金。そして、労働法制の改悪など私たちにとって、どれもけっして軽視できるものではありません。それどころか、全てのテーマが、これまでの日本の労働運動のあり方を抜本的に見直し、再検討と再構築をすることが強く求められるテーマであります。 こうした激しい変化に対応し、新しい時代に挑む上でも、いま全労連と労働総研との連携の強化は、きわめて重要になってきております。 総会議案書にも経過として記述していただいておりますが、この間こうした視点にたって全労連と労働総研が2度にわたり懇談を行いました。このことは大変大きな意義をもつものであります。 労働総研の皆さんには、現にたたかっている全労連運動の到達点や労働者が置かれている現状をリアルにご理解頂く。同時に私たち全労連は、専門的な研究を行っておられる皆さんから、専門的立場から見た全労連運動への率直なアドバイスや提言をいただく。双方の懇談の場は、お互いの認識を一致させるうえで大きな役割を発揮します。また双方が一致した現状認識に基づいた政策や提言は、みずみずしい生命力をもち広範な労働者・国民の感心を高め、共感を呼び起こします。そして、より大きな影響を社会全体に与えることは明らかであります。 私ども全労連といたしましても、こうした場を作る努力を今後とも重視してまいりたいと考えております。 労働総研は、全労連のみならず全労連加盟単産との懇談にも大変積極的に取り組まれておられるようであります。 現下の厳しい情勢にあって、激しく変貌する職場や地域の実態をふまえた産業政策は、大変強く切望されているものであります。そしてこの産業政策は情勢を切り開く上でも、また要求実現のうえでも大変大きな力を発揮するものであります。 既に皆さんのご協力も得て、JMIU、全国一般、建交労、自交総連、全印総連などが産業政策を作成し、また作成を手掛けておるところであります。今後ともこうした懇談を重視していただくとともに様々な産業・中小企業政策、地域経済活性化への提言などにご協力いただくことを強く期待するものであります。 全労連は、昨日と一昨日評議員会を開催いたしました。 この評議員会は、規約改正に伴い大会が2年に一度になった関係で評議員会との位置付けをしておりますが、従来で言えば大会として位置づく評議員会であります。 この評議員会は、二つの任務を持っておりました。1つ目の任務は、大会以降1年間の貴重な運動の教訓を汲み尽くし、今日、労働者・国民の雇用・営業・くらし、そして、平和と民主主義が深刻な危機にさらされている状況をどう打開するのか。また解散含みの情勢にたいし要求実現の闘いと国政の民主的転換をどう結合させてたたかうのか。さらに日本経団連のいわゆる「奥田ビジョン」に基づく春闘解体攻撃に対しどう春闘を再構築していくのかなどの課題を含めた、今後の方針を確立することでありす。そして、もうひとつは全労連にとって起死回生の取り組みともいえる組織拡大基金を具体的に推進する意思統一を勝ち取るという任務でありました。 ご案内のように全労連は、2000年7月の19回大会で「21世紀初頭の目標と展望」を打ち出しました。財界の「21世紀戦略」に対置しこの「目標と展望」では、(1)人間らしく働くルールを確立すること、(2)全国民の最低生活保障を確立すること、(3)国民本位の政治に転換することなど、3つの中期的目標を明らかにしました。 さらにこれらの具体化として昨年7月の定期大会では重点課題として、(1)最低賃金の改善、男女賃金格差の是正、パート均等待遇、(2)解雇規制法の制定、167万人雇用創出の実現、サービス残業の根絶、(3)NTT闘争と国鉄闘争の前進、公務員労働者の労働基本権確立、(4)医療・年金など社会保障の改善、大増税阻止、(5)憲法改悪、戦争反対の5つを重点課題と位置付け取り組みを強化してきたところです。 厳しい情勢にも関らず単産・地方労連全体の取り組みを通じてこの間、貴重ないくつかの前進を勝ち取ることができました。 解雇規制のたたかいでは、必ずしも深刻な雇用破壊を食い止めることはできませんでした。しかし労働法制改悪とのたたかいでは「使用者の解雇自由」を大きく修正し労基法に初めて「解雇権の乱用禁止」を明記させることができました。これは連合を含む広範な共同闘争による貴重な成果とも言えるものであります。 さらに、パート均等待遇の運動では、パート・臨時労組連の行動に全野党の議員が賛同するなど大きく局面を切り開く展望をつくりあげました。 また、社会保障分野のたたかいでも共同は大きく発展しました。医療費本人3割負担反対の運動では、これまで自民党の政治基盤とも言われてきた医療4団体との共同が中央・地方・地域レベルで大きく発展しました。このたたかいでは、はじめて日本歯科医師会の会長と全労連議長の正式会談が実現し、大会方針が掲げたあらゆる社会勢力との共同に大きな一歩を踏み出すこととなりました。 当日、日本歯科医師会の会長との会談は10分近く伸びました。廊下に出たところ、薄暗い廊下の奥で、どこかで見た男がウロウロしておりました。その男は自民党幹事長の山崎拓でありました。医療改悪をめぐる自民党と日本歯科医師会の政治的力関係や冷えきった関係を象徴的に現す出来事でありました。 この間の世界的規模で展開されたイラク戦争反対のたたかいや有事法制・イラク特措法のたたかいを通じ、引き続き陸海空港湾20労組や宗教者との共同を発展させるとともに、新たに広範な文化人との共同をも実現させてきました。とりわけこれら中央での共同の前進が地方レベルでの共同を前進させている事は注目すべき事実であります。 評議員会の発言は、それぞれの地方・地域での共同が力強く発展していることを顕著に示すものでありました。 自治労連からは統一地方選をたたかう中で、市町村合併問題で37地域のうち14の地域で合併慎重派が勝利したとの報告がなされました。 福島からは、平和問題での共同にとどまらず、大型店の進出問題での商工会議所との共同。市町村合併問題での自治体との共同。さらに原発問題での共同など、いまや共同はあらゆるテーマでの広がりを見せ始めていると、運動の発展をふまえた確信に満ちたものでありました。 大阪からは、これらの共同の取り組みが労働運動にとどまらず、この秋、あらゆる民主団体に広がりを見せているとの報告がなされました。大商連は、消費税問題で全自治体訪問を、民医連は、ホームレス問題で、農民連は中国におけるササニシキでお米屋さんとの共同を、そして新婦人は有期雇用労働者の育児休業問題をテーマに大きな共同を展開することを計画しております。こうした地域・地方の運動を支え発展させるうえで地域労連の果たす役割の重要性が強調されました。そして全労連に対し、今後地域労連の結成と強化を一層重視することが強く求められました。 評議員会では、付属議案で「21世紀の新しい国民春闘の前進にむけて(案)」も提起されました。この提起は、概略つぎのようなものであります。 財界の「春闘解体」攻撃を打ち破り新しい国民春闘の方向を切り開いて行く土台は、労働組合の「企業内主義」を克服することがなによりも重要である。そして、政府・財界の全面的攻撃を打ち破り要求を前進させるには、個々の企業や産業での闘争を強化するだけでなく、社会的力関係を変えていくことが強く求められていることを強調しています。 そして、そのためにはあらゆる階層との共同を押し進め国民総ぐるみによる、市民の目線に立った春闘を作り上げなければならず、地域からの春闘の構築が決定的に重要であるとしています。 先ほど紹介した今評議員会での全体の議論は、あらたに提起したこの国民春闘前進の方向性を実践的に裏付けるものでありました。 さらにまた、今評議員会では、組合拡大基金の具体的推進が決定されました。どの単産も厳しい財政状況のなか、率直に言ってこの問題については何度か流産しかけた局面もありました。しかし、その度に全労連がいま組織的前進を勝ち取ることの政治的重要性を繰りかえし論議してきたわけであります。もはや、組織拡大は単産の個々バラバラな取り組みでは前進することはできず、単産や地方の組織戦略に基づき全労連総体として力を集中していくことが強く求められているわけであります。こうした認識が、この間の論議をとおして少しずつ全体の共通認識になり始めてきたわけであります。 採決の結果、反対ゼロ、きわめて少数の県労連から保留がでました。しかし、これも十分な議論を行ってから結論をだそう。そうした極めて前向きの姿勢を持ったものでありました。評議員会は、圧倒的多数で組合拡大基金の具体化の方針を採択したわけであります。 最後に若干私見も交えることになるかもしれませんが、労働総研に三つのことを期待したいと考えております。 その第1は、リアルな実態の調査と調査結果を通じての社会的告発であります。激しく労働者に加えられる攻撃は、一昨日マスコミで発表されました自殺に関する統計を見るまでもなく、もはや人間としての限界を超えたものとなっています。事実こそがもっとも現実をリアルに説得力をもって国民に訴える力を持つものであることは間違いありません。そうした視点に立って、今日の情勢は改めて調査活動の持つ意味を高めていると考えます。 かつて東京都の名うての労務が私にこう言いました。「西川さん、皆さんが役人を動かす力はなんだと思います。理屈じゃないんですよ。現場の事実なんですよ。だってそうでしょう、現場の現実を知っているのはあなたがたしかいないんだから。」あらゆるたたかいの出発点は、まさに異常そのものである労働者の深刻な実態の社会的告発から始まるのではないでしょうか。 第2は、地域・地方労連とも連携し地域の変化を系統的に追うことの重要性であります。悪法反対運動のみに終始する全労連運動では、もはや広範な労働者の信頼を勝ち得ることはできません。例えば、リストラ問題に対するたたかいであります。地域の産業や経済の動向を系統的に追いつづけていれば、すべてとは言いませんがリストラが起こる前にこの地方のこの企業ではリストラが起こる可能性があることが見えてくるはずであります。大分の評議員はこう発言しておりました。単産で見えないものでも地域では見える。これに労働総研が全国ネットで対応すればまさに鬼に金棒であります。これらの分析をとおして未然にリストラを防ぐことも可能になるわけであります。 第3に、改めて政策や提言の重要性であります。誤解のないように注意深く申し上げます。組合拡大基金は、全労連の組織の前進にとって決定的に重要な問題であります。そして、この取り組みはいわゆる組織のオルグなど専門化のみが組織の拡大に専念するのでなく、10万人を越える大衆的スケールをもった組織拡大を今後追求すると言う全労連、あるいは単産の体質改善の運動でもあります。しかし、率直に言って、1〜2年のこうした運動で全労連の組織が飛躍的に前進するほど現実は甘いものでないこともシビアーに見ておくことは大切なことであります。 そうした状態の時、一体何をもって広大な未組織労働者や国民に全労連の社会的存在をアピールするのか。こうした問題に直面します。それは、間違いなく政策と提言であると思います。そして、同時にこの政策と提言を、どのような媒体を通じて広大な不特定多数の未組織労働者の目に触れさせることが出来るかと言う問題も大変切実な問題であります。 勝手な注文を行いました。しかし、結成し14年という歳月を経たからこそ、こうしたことも率直に言えるようになったのかもしれません。 ながながとご挨拶をさせて頂きましたが、しつこいようですがもう一度強調させて頂きます。新たに飛躍をしようとする全労連にとって、全労連と労働総研の連携は一層重要であり、そして労働総研の存在はかけがいのないものであることを最後にもう一度強調しておきたいと思います。 総会の成功を心から祈念致しましてご挨拶といたします。 |
6・7月の研究活動 |
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6・7月の事務局日誌 |
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寄贈図書 |
*『関門地域研究第11号』 02年3月・関門地域共同研究会 *社会福祉辞典編集委員会編『社会福祉辞典』 02年10月・大月書店 *松井繁明・生熊茂実編著『リストラ撃退ABC』 02年10月・学習の友社 *名古屋市職員労働組合連合会編集・発行『名古屋市労連50年の歩み』 02年10月 *編纂委員会編『新日本婦人の会の40年』 02年10月・新日本婦人の会 *山田敬男編著『日本近現代史を問う』 02年11月・学習の友社 *浜林正夫・野口宏著『よくわかるパレスチナ問題』 02年11月・学習の友社 *『京浜臨海部再編整備問題調査研究報告』 02年12月・NPOかながわ総合政策研究センター *小森良夫著『「ルールなき資本主義』との闘争』 03年1月・新日本出版社 *『写真で見る東京労連の10年』 03年1月・東京地方労働組合総連合 *千田忠男著『現代の労働負担』 03年2月・文理閣 *労務理論学会編『現代の雇用問題』 03年2月・晃洋書房 *保育研究所編『子どもの「変化」と保育実践』 03年2月・草土文化 *近松順一著『戦後高度成長期の労働調査』 03年3月・御茶の水書房 *労働法制中央連絡会・自由法曹団編『解雇自由はゆるさない』 03年3月・学習の友社 *萬井隆令監修『バイト・フリーター110番』 03年3月・かもがわ出版 *黒川俊雄・小越洋之助編著『全国一律最賃制を軸としたナショナル・ミニマム』 03年4月・ディノプリント出版会 *大野威著『リーン生産方式の労働』 03年4月・御茶の水書房 *遠州尋美著『グローバル時代をどう生きるか』 03年4月・法律文化社 *全労連編『社会保障読本』 03年4月・学習の友社 *『七十七銀行従業員組合組合史』 03年4月・七十七銀行従業員組合組合史編纂委員会 *矢野紀人・相野谷安孝著『国保崩壊』 03年5月・あけび書房 *伊原亮司著『トヨタの労働現場』 03年5月・桜井書店 *ジル・A・フレイザー著『窒息するオフィス仕事に強迫されるアメリカ人』 03年5月・岩波書店 *財団法人政治経済研究所『今日のナショナルミニマム』 03年5月 *東京建築カレッジ『池袋北口職人大学』編集委員会編『池袋北口職人大学』 03年6月・彰国社 *働くもののいのちと健康を守る全国センター編『働くもののメンタルヘルス』 03年6月・学習の友社 *全労連NTTリストラ闘争本部編『検証NTTリストラ』 03年7月・高菅出版 *D.ドーリング他編著『現代イギリスの政治算術』 03年7月・北海道大学図書刊行会 *保育研究所編『どうする日本の保育』 03年7月・草土文化 |
『これでいいのか 日本資本主義』労働運動総合研究所 2003年名古屋研究例会 |
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と き :2003年10月4日(土)午後1時から 第1部 記念講演
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