労働総研ニュースNo.162・163合併号 2003年9月・10月号
目 次 |
・『これでいいのか日本資本主義』シンポジウム |
労働運動総合研究所名古屋研究例会 「これでいいのか 日本資本主義」シンポジウム 2003年10月4日 労働会館東館2階ホール |
〈主催者代表挨拶:大木一訓(労働総研代表理事)〉 |
これでいいのか日本資本主義、 これからどうなる日本資本主義 戸木田嘉久(労働総研顧問) |
私の思想形成と愛知 私は名古屋でお話をするのは、何回目という程度で、いつも素通りをいたしておりまして、申し訳なく思っています。しかし、私と愛知との関わりは非常に強いものがあるのです。戦前、私は、豊橋で軍隊生活を送り、大変重要なことを学びました。それは、“人間は豊かに生活をできないと卑しくなってしまう”ということです。 サービス残業廃止を20数年前から主張 私に与えられたテーマは、「これでいいのか日本資本主義、これからどうなる日本経済」という大きなテーマです。「これでいいのか日本資本主義」ということについていえば、日本経済はいまのままでは、どうにもならんということははっきりしていると思います。先ほど、大木さんも挨拶で触れられておりましたが、日本資本主義は破綻に直面していると思います。 小泉「構造改革」の階級性 私は、「これでいいのか日本資本主義」という問題を考える場合、つぎの三つのことを取り上げる必要があるのではないかと思います。 政策を実現する国民的共同を強める 2番目の問題は、日本資本主義の現状がいかにひどいか、それを転換していく労働者の要求と政策、それを実現する力に関する課題です。トヨタの働かせ方がいかにひどいか、これを正確にとらえることはもちろん大事なことです。エンゲルスは、『イギリスにおける労働者階級の状態』で、「労働者階級の状態は、現在のあらゆる社会運動の実際の土台であり、出発点である」書いています。 労働運動の社会的責任が問われている 3番目の問題としては、全労連だけでなく連合を含む日本の労働運動の今日的問題があります。日本の経済と社会はひどい破綻状態にあります。このひどい状況をつくりだしていいる主犯は、大企業・財界、それを支援している小泉内閣であることはいうまでもないことですが、それをまかり通らせている、日本の労働運動に対しても、「これでいいのか日本の労働運動」ということが問われているのだと、私は思います。 アメリカと大企業支援の小泉「構造改革」 まず問題は、小泉内閣の「構造改革」路線はどのようなものか、そして労働運動は、それとどのようにたたかうかということです。 標準労働時間をめぐる階級闘争 このことと関連しては、小泉「構造改革」のイデオロギーである「規制緩和」、「市場原理主義」による「働くルール」の破壊を止めさせて、「働くルール」の再構築を図ることが重要です。解雇規制、「サービス残業」の禁止、労働時間短縮による雇用の創出、最賃制の確立、社会保障の擁護などです。 国際的労働基準への反動的挑戦を許すな 日本でも戦後、新しい憲法を獲得し、現代的な基本権が確立されるなかで、労働基準法で8時間労働制が決定されたのですが、日本はいまだにILOの第1号条約を批准していません。そして、小泉「構造改革」のもとで、8時間労働制、週40時間労働制の原則を骨抜きにし、「サービス残業」や無制限の長時間・過密労働を強制する変形労働や裁量労働制の導入など、戦後制定されて以来の労働基準法の大改悪が強行されているのです。これは、国際的な労働基準への反動的な挑戦であって、断じて許してはならないと思います。 「リストラ合理化」の特徴 80年代までの「合理化」は、「ME合理化」が主流でした。新しい機械が導入されて、それをテコにしながら「合理化」を促進する。相対的に賃金を安くして長時間働かせる。労働密度を高めるという搾取強化の三つの方法を組み合わせた「合理化」攻撃でしたが、90年代以降の「リストラ合理化」は、国際的な企業間競争に勝ち抜くということを錦の御旗にかかげ、独占資本の国際的な企業展開のなかで、一番有利な採算条件を国内でも作り上げる戦略をとっています。その場合、「リストラ合理化」は、「過剰設備」、「過剰資本」と「過剰債務」の切り捨て、「過剰雇用」の切り捨て、首切りをテコにしてすすめられているという特徴をもっています。 「リストラ合理化」がつくりだす大規模災害 このように日本資本主義と国民生活を破壊に導いている小泉「構造改革」のもとでは、大々的な「景気対策」をやっても、日本経済と国民生活は少しもよくならないのは当然です。小泉「構造改革」はその根本が間違っているから、「デフレスパイラル」といわれる状況も起こっています。国と地方の借金は700兆円を超え、サミット7ヵ国のなかで最悪で、財政は破綻状況にあります。「産業空洞化」が進行しています。 国民の立場からの政策とは それでは、以上見てきた大企業・財界と小泉自民党・公明党連合政権が強行している無茶苦茶な国民生活と営業破、地域経済への破壊攻撃に対して、われわれは、いったいどうすればいいのか。政府は、労働者・国民から、毎年国家収奪を強化して、膨大な金を大企業支援のために注ぎ込んできましたが、十数年たってもいっこうに景気はよくならないどころか、デフレスパイラルなどといわれるように、日本経済は不況が不況を呼ぶ深刻な危機的状況に陥っています。もちろん、食料やエネルギーの自給率の問題も含めて、危機的な状態になっているのです。 憲法改悪を許してはならない 私は、小泉首相が日時を切って憲法改悪を行うと宣言している一連の動きを大変心配しております。憲法改悪の動きは何度もありましたが、そのたびに、労働者・国民の運動で中止させてきました。その国民的エネルギーは、第2次大戦の悲惨な経験から、二度と戦争をしたくないという国民の強い信念にあると思います。その国民の決意を体現した日本国憲法は第9条で戦争の放棄、戦力および交戦権を認めないことを宣言しました。この第9条のお陰で、日本国民は戦後57年間の永きにわたって、戦争をしていないという、世界に誇れる道を歩んでくることができたのです。 切望される労働運動の再構築 ところが、日本の労働運動の一翼は、「戦後第二の反動攻勢」のもとで、1970年代後半から労働戦線の右翼的再編を推進し、労働組合の社会的任務を放棄しはじめたのです。労働戦線の右翼的再編の口火を切ったのは同盟とIMF・JCで、民間先行、労働組合主義、左右の全体主義反対、国際自由労連加盟など4原則を踏絵にかかげていました。はじめ総評はこれに反対していましたが、社会党が公明党との間で、反共主義を政治的原則に、日米安保条約の容認、自衛隊の存在を認め、自民党の基本政策と同じ政治方針に右転落して以降、当時の総評指導部も「社公合意」を積極的に推進し、同盟・JC路線にもとづく労働戦線の右翼的再編成に合流し、全民労協から民間連合をへて1989年に連合が結成され、労働組合の社会的責任や影響力がことさらに薄くなったことは明らかです。 全労連「21世紀初頭の目標と展望」を掲げて 大企業の労働組合が、憲法改悪の策動と連動した一連の政治反動の動きを支えるような、「産業報国会」とまではいいませんが、企業との「運命共同体」化の方向をつよめることを軽視することはできません。しかし、国民の利益を守る立場に立ち、さまざまな政治反動の攻撃に国民とともに反対し、労働者の生活と権利を守るために運動をしている全労連が結成されて以降、連合の政策と運動にも一定の変化が現われていていることも見落としてはならないだろうと思います。全労連と連合は具体的な政策課題で共闘を行ってはいませんが、労働法制改悪反対闘争や最賃闘争などではかなり近寄った要求で運動していることを、私は注目しています。 〈司会:浅生 卯一(東邦学園大学教授)〉 |
国民の団結した力で日本経済の再建を 太田 義郎(愛知商工団体連合会会長) |
私は、名古屋市の中村区に住んでいますが、三日ほど前から、私の住んでいる商店街をご老人が続々通るようになったんです。何でかと聞いたら、近くに自然食品の店ができたというんです。朝早くから、30〜40の人が並んで何かもらっておるんだわ。健康食品の店は、はじめはただの景品を配って、だんだんと高い健康食品を売りつけるんださね。病院代も高こうなったから、老人は無け無しの年金や貯金を取り崩して、健康食品を買わされて、自分の健康を守ろうとしておるんです。小泉「構造改革」による医療費の改悪に便乗して、こんなとんでもない商売が横行しているんです。 9月18日、東区の輸送会社「軽急便」名古屋支店で、「軽急便」と契約した「会員」がガソリンまいて爆死するという事件がおきましたね。本当に変な話ですが、「民商の会員」でなくてよかったと思いました。爆死した「会員」の話の内容は本当にメチャ深刻です。「軽急便」は、荷主の都合に合わせれば、毎月40〜50万円の収入が可能であるといううたい文句に引かれて応募してくる個人業者を「会員」とする形で契約し、荷物輸送を「委託」することになっておるのです。「会員」は「軽急便」に「登録料」7万円、「指導料」7万円を支払い、100万円前後の専用車両を購入して事業をはじめるんだわ。ところが爆死した「会員」の「売上」は、結局一月8万円しかない。経費は全部自分持ち、始めるときは何十万収入もあると聞いて始める。軽自動車を買い、ガソリン代も電話代も全部自分持ち、やった仕事から、「登録料」だ「指導料」だといって売上からピンハネされて、結局8万円しか残らない。家族含めて4人だけど食っていけない。この事件は「軽急便」の「会員」への約束違反、詐欺行為に対する抗議による爆死事件ではないかと思うんです。 全商連の本部は柄にもなく、田中角栄元首相の邸宅や学習院大学などがある東京の目白という超高級住宅地にあるんです。そこで駅前で配られているチラシをもらって見ると、マンション価格が1,480万円と書いてある。もう一つのチラシには1,780万円と書いてある。あァー東京のマンションも安くなったなーと思って、机に座ってよくよく見ると、1億4千万円だがね。庶民の感覚から見ると1億4千万円は高い。品川駅の近くの高層マンションは、ほとんど設計図の段階で売り切れるという。最低でも1億5千万円、2億円のマンションがどんどん売れているというんです。世の中景気がいいんですよ!ものすごくいいんです。1億円以上のマンションが飛ぶように売れている。1,400万円〜1,600万円のマンションは売れないそうです。 よく考えれば、金持ちで10億円の収入がある人は、これまでは7億円ほど税金を取られていた。3億円しか手に残らなかったが、いまは手元に7億円残って3億円が税金で取られる仕組みに変わったんです。これなら何億円ものマンションを二つ買えるわけだがね。竹中という大臣が億ションをふたつもっているというが、これならわかる。 税制が変わっただけで、利益をこうむる人がいる。いま長者番付で金持ちの人の名前がでてくるのを見ると、たとえばサラ金の経営者がどんどんでてくる。聞いたこともないインターネット関連の人たちは、何億円ともうけている。そういう人がいる一方で、「軽急便」の労働者のように働いても働いても月収わずかに8万円とう人がでてくる。いま儲かってもうかってたまらんという人は、新興宗教のように人を100人も1,000人も働かせて、搾取と収奪を続けている人たちです。いわゆる有能な人がものすごいもうけているんです。それが、ローソンやサークルK、「軽急便」の経営者だがね。片一方で、努力しても生活できない人が増えるんです。 愛商連の事務所の近くに99円ショップがあるんです。あれはほとんどフランチャイズシステムです。今日お集まりの労働者の方に商売のこといってもわからないかも知れないが、「売上」から「仕入価格」を引いたのが「粗利益」というんです。たとえば100円が「仕入価格」で、それを120円で売ったら20円の「粗利益」がでます。ところが、サークルK本部はフランチャイズしているコンビニから「粗利益」の42%を持っていくんです。コンビニというのは大体そういう風ですよ。だから儲かるんです。こんな収奪の知恵を働かせる頭のいい人は儲かっているけれど、ふつうに働く人は利益がないんです。そういう儲けの仕組みを考える人は大きな利益だしている。こんな世の中になっているんです。 私のところは米屋です。米屋はもう斜陽だと思っていたら、「太田様塾の経営をしませんか」というチラシが入っていた。うちだけにきたのかと思っていたらみんなのところにチラシを入れているんです。この「学習塾」の経営もフランチャイズですね。ドトールコーヒーという180円コーヒーがあるでしょ。あれもフランチャイズです。3,000万円ほどの資本金でやれるといいます。そういう儲けの仕組みを考える人は利益を上げているが、フランチャズに参加した人は収奪されるというのが現状です。 巷ではどういっているかといえばこれも大変な状態です。うちの奥さんが病院へ行ったらとき、待合室で混んでいたそうです。待合室でおじいさんが、障害者の人が来たのを見て、「こんな人が来るで混むんだわ」といっておったと怒っていました。ところが若い人は、「年寄りばかりきている」と怒ってるわけです。年金の問題でいえば、「公務員の人は年金よけいもらえてええな」といわれている。公務員や労働者は、「商売人は税金をちょろまかしていいなぁ」といっている。 先ほどの戸木田先生の話にもあったように、いま国民同士が、隣の人のご飯が多いように見えるようにさせられているんです。国民同士が文句言い合ってる状況をつくりだされているのです。国民同士の利害がぶつかっている。そんなとき、小泉は2010年国家の収支はとんとんにするとさりげなくいっている。小泉首相は「私の任期中は増税はしません」といって、後の内閣が増税できる仕組みを着々と整備しているのです。プライマリーバランスをとって収支とんとんにするということは、消費税を20%に引き上げるということです。日本経団連会長の奥田さんがいうように、毎年1%ずつ引き上げて16%にするというようななまやさしいものではないのです。こんな風になったら国民は生活していけるのかということです。国民がお互いで文句言ってる間に、消費税を上げるのは福祉を守るためにやむをえんとなりかねません。政府は、消費税を導入するとき何といったのか思い出してください。「福祉のために使う」といったでしょう。ところが福祉のためなどにはほとんど使っていない。政府は国民への約束を平気で破っているんです。国民が黙っていたら何されるかわからん状況です。 しかし、情勢も大きく変わってきています。私たちは商工会議所や商店街連合会などを回って懇談をしていきたのです。商工会議所の部長さんが、「民商さんと意見はほとんど一致している、これから世の中どうなるかわからんので、定期的にいろんな情報を教えてください、いまは一緒に運動できないが、いつかいっしょに運動するときはよろしく」といわれたのです。こんなことをいわれたのははじめてのことです。びっくりしました。商店街連合会の専務さんとは、「商店街は元気が出ない、後継者もいない」という話になる。あらゆるところで国民が団結して、日本の経済をよくするために話し合いをすすめていきたいと思います。 |
深刻の度を増す高校生の就職状況 近藤 啓志(愛知高等学校教職員組合前書記長) |
今日は、愛高教が行っている高校生の就職状況調査について話したいと思います。正直にいって大変な状況になっています。私は、7年ぶりに職場に帰って浦島太郎的状態なんですが、逆にいうと7年前といまがよく比較できる点では、事態の大変さがはっきり見えるという利点もあるようです。私は、県立刈谷北高で生徒たちを教えているのですが、7年前と状況がいろんな面で違っています。この高校へくる生徒たちは、トヨタ系列の中堅社員の子供たちが多いので、経済的には裕福な家庭階層の子供たちだろうと思います。 ところが、いま問題になっているのは、授業料未納者の問題です。6ヵ月以上未納だと退学処分となるのです。愛知県はそれを急に厳格にやると言い出しました。私は、授業料未納者が何人もでるとは予想もしていませんでした。事務の方に話を聞いたら、「先生、時代が違うよ」といわれました。親が子供の高校の授業料さえ払えない。そんな事態に追い込まれているのです。県立高校はアルバイトは学校の許可制になっています。小遣いほしさの生徒は学校にかくれてやるけれども、親が子供にアルバイトをやらせてくれと学校にいってくるとか、届けを学校に出すというのは相当深刻なんです。 愛高教はそんなに力はないけれども、緊急奨学金制度というのを立ち上げました。給付枠は50人ですけどももういっぱいという状況です。求人状況ですがずいぶん心配しています。就職できるかどうかだけではないからです。職業高校へ行った生徒の大半は就職を目指して入学し、学業にいそしんできているのです。ところが、就職が困難な状況にあるので、卒業した先の展望が見えないということは、生徒たちにとっては大変なことなのです。高校生活が有意義に送れない原因となっています。「俺たち先がないからなぁ」という生徒がでてくる。フリーターでいいやとなるのです。 数値で見ると、一昨年7月時点で、求職を希望した生徒数に対する求人数は3.1倍ありました。昨年2.4倍に落ちました。2.4倍の求人というのは実際には1.0倍位の数値です。求人書類を全国的にどこの職安にも送るという企業があるからです。高校生がそんなところに勤めるのはイヤだというような居酒屋チェーンなどは、無差別に求人の書類を送ってきます。今年の求人数は昨年よりも横ばいか下がっているようです。 ふたつ目の問題として、就職決定率があります。これはがくんと落ちています。愛知県は全国的に見て就職決定率がいい方ですが、12月末で見ると、一昨年は83.8%でした。昨年は63.1%です。最終的には93%程になったのですが、これは統計上のカラクリがあるのです。「就職するのはもういい」とあきらめる生徒や、「フリーターでいい」という生徒は統計からどんどん除かれていくので就職率が上がっているにすぎません。 求人内容にも変化が起きています。雇用の流動化の影響から、特に著しいのは女子の就職です。商業高校へいく生徒の授業の中身は、基本的には事務系の職種を目指す内容ですが、いまは女子の事務職の求人はもうありません。事務職の求人が高校から四年制大学や短期大学にしました。トヨタ系の企業は四大卒を一般職として採用しています。一般職というのは、かっての高校卒の給与体系です。高校生のはいる余地がなくなってしまいました。高校女子を事務職として採用するもうひとつの大口が金融機関でした。しかしいまは、愛知県の金融機関で高校生を事務職として採用するところは、ほぼありません。 派遣業の影響で、人材派遣業が安く派遣していくので、販売職への就職がほとんどなくなりました。百貨店、大手スーパーほとんど採用しませんので大変困っています。愛知は製造業が多くあるので、男子高校生の就職率は比較的よかったのです。ですから、高校時代にがんばった生徒は比較的安定した企業に就職できるということで、「はげみ」にもなっていたのですが、いまは、頑張った生徒の行き先がないのです。公共性の高い企業は、本来、地元の生徒を受け入れるところですが、それがないのです。中部電力は高校生を採用しなくなりました。県下の電気科に衝撃が走りました。企業の社会的責任を問わなければならないと思います。愛知県は他県と比べて高校生の就職率が比較的良かったので、そういう角度から企業の社会的責任を追及する動きが弱かったと反省しています。青年の就職を保障する共闘を強力にすすめなければならないと思っています。各学校の先生方の意見を紹介しておきたいと思います。「人材派遣を重視するのは、産業基盤の沈下になる。日本の技術者を育てることにならないと思う」「子供に将来展望を与えてほしい、行政も青年の雇用について積極的になってほしい」。これが高校現場からのの意見です。 |
社会的責任を果すために奮闘する 見崎 徳弘(愛知県労働組合総連合議長) |
シンポジウムのテーマは「これでいいのか日本資本主義」です。率直にいえば「これでいいはずがない日本の資本主義」だと思います。ところがそのことに関しての国民的合意ができていないのです。 大企業が強行する「リストラ合理化」によって多量につくりだされる失業と雇用不安の問題がきわめて深刻です。労働相談にきた事例ですが、青年が「首を切られた」と駆け込んできました。高校を卒業し、自動車整備士学校で整備士の資格を取って愛知トヨタに就職したというのです。雇用契約書は臨時社員雇用だったといいます。この時節に正社員になるのはそれなりの見習い期間があっても「仕方がない」と思って半年待ったといいます。しかし、正社員になれない。1年たち、1年半たったけれども、同期に採用された青年はみんな臨時採用のままであるというので、同期の臨時社員が集まって、社員になるための試験があれやってもらいたい、試験に通ったならば、正社員にすると約束してなどの意見が出され、会社に聞きにいこうということになったけれども、誰も聞きにいけないので、言い出しっぺの自分が聞きにいったら、契約期間満了で「あんたは次からはいりません」といわれたというのです。「これはどういうことだ」というのが相談の内容です。こんな理不尽なことで青年を解雇をしたのは愛知トヨタですよ。労働相談所長の阿部さんが、その青年にローカルユニオンに入ってもらい、血相を変えて交渉に行きました。愛知トヨタは「すみません、すみません」といって、もう一度再契約をするといったけれども。青年の方は「こんな会社は信用できない」と怒って最終的には金銭解決で終わりました。 もう一つの例ですが、ある女性が、高島屋で販売職の試験を受けて採用されたので、高島屋で働けると思って高島屋に出勤したら、実は、高島屋がつくった別の派遣会社の採用であったというんです。高島屋がつくっている派遣会社が高島屋にテナントとして入っている高級専門店に彼女を派遣したのです。労働相談所にはこういう問題がどんどん入ってきます。 これは別の事例ですが、就職担当の先生が、ソニーから工場見学の誘いがあったので出かけていったそうです。ソニーには全国に7つの工場がある。愛知県の幸田町にある幸田工場は全国一の工場だそうです。いってみて驚いたのは、半数以上が外国人労働者で、日本人労働者がいないので、来年の卒業生はどれくらい採ってくれるかと聞いたら、申し訳なさそうにゼロだというです。それを聞いた先生はソニーに怒ればいいのに、工場見学から帰ってきて愛労連にきて、「もうちょっと愛労連は雇用問題をしっかり取り組め」と怒っていました。私は、「私も怒れるけど、先生も校長会や行政やいろんなところで、青年の雇用がこれでいいのか」といってくださいよといいまして、お互いでそういう行動を強めていこうということになりました。 このように大企業は、若者の雇用をがたがたにしておいて、最高の利益を上げています。戸木田先生も強調されていましたが、「サービス残業」問題、36協定の青天井問題は大変深刻です。調べてみますとトヨタ系の企業の36協定では、残業時間が720時間とか1,080時間というものがあります。労働基準法の改悪のなかでも、年間の残業時間は360時間を上限にすると政府は国会で答弁していますが、その約束はどこに行ったのかということです。その上に「サービス残業」があるから無茶苦茶な過労死や過労自殺がでるほどの超過密労働時間になっています。 びっくりしましたが、中部電力は「サービス残業」による不払い賃金を6,500人の労働者に総計9億円支払いました。こうしたことは社会的な運動によって実現することですから、愛知トヨタにもソニーにも中電にも、われわれは名指しで、「サービス労働時間をなくして、社員を雇用せよ」と要求しなければならないと強く決意しているところです。連合系の大企業の労働組合は何をやってるのかといいたいと思います。最近続発する重大企業災害事故の原因は「リストラ合理化」にあると、戸木田先生が強調されましたが、新日鉄のタンク火災、エクソンのガソリンタンク爆発、「軽急便」での爆発事故など、これが21世紀の労災かと思われる事故ばかりです。こんなことでは、企業の技術力も安全も地に落ちたと思います。戸木田先生は「これでいいのか日本資本主義」というのは、「これでいいのか日本の労働運動」ということでもあるといわれましたが、労働組合の責任者の一員として居づらいシンポになりましたが、全労連運動を大きくして、労働組合運動が国民に担っている社会的責任を果たすために奮闘したいという決意をのべまして発言といたします。 |
〈司会:浅生 卯一〉 全労連「21世紀初頭の目標と展望」を
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8・9月の研究活動 |
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8・9月の事務局日誌 |
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