労働総研ニュースNo.167号 2004年2月
目 次 |
・小泉『構造改革』の行きつく先─ 足利銀行・新生銀行問題にふれつつ |
小泉『構造改革』の行きつく先─ 足利銀行・新生銀行問題にふれつつ 今宮 謙二 |
はじめに 小泉「構造改革」のもと、強行的に大銀行再編を進め、現在は地方銀行の再編・整理という新しい局面に移りつつある。昨年11月におこなわれた足利銀行の「特別危機管理銀行」(一時的国有化)がそのキッカケとなっている。それに加えて一般の経済界では最近大きなショックが生じた。2月9日旧日本長期信用銀行を引き継いだ新生銀行が株式上場の売り出し価格を525円と発表し、19日に上場された株価の最終値段が、その約1.6倍にあたる827円をつけたことである。さすがに翌日は700円台に落ちこんだが、かりに800円台を維持するならば、株主であるリップルウッドを中心とする外資系グループは、わずか1210億円の資金投入で全体として約1兆円以上の利益を手にすることとなる。(今回の売却収入約2500億円、残りの株式保有時価約7600億円)しかもこの利益に対して日本には課税権がない。一方新生銀行の政府の公約資金注入額約7.8兆円のうち、すでに3.6兆円の損失は確定している。政府の引き受けた優先株3700億円は今後新生銀行の株価が上昇すれば売却益はでるものの、結局公的資金の最終損失額は4兆円から5兆円に達するとみられている。これだけの税金負担を国民におしつける一方で外資系ファンドに巨額な利益を保証した現実に多くの人が納得しないのは当然であろう。しかし、この新生銀行問題は、小泉「構造改革」そのものの実態を明らかにしたものである。つまり、小泉・竹中プランの行きつく先がこれであるといえよう。 1 小泉「構造改革」をどうみるか 小泉「構造改革」はすでに3年以上経過した。これをどうみるかについて、反対する立場からすでに破綻したととらえる見方が支配的である。小泉政権発足時に発表した第1次骨太計画によれば、すでに今年は民間主導による景気回復過程にあったはずである。昨年10〜12月に実質成長率が年率で7%に達し、政府は景気回復が進んでいるとみている。しかし実態はそうではない。GDPデフレーターが2.6%というもとで実質成長率が高くつくりあげられた数字という面だけでなく、民間需要の最大要因である国民購買力は冷え切ったままだからである。2003年の家計最終支出は実質で1%増にすぎず、名目では逆にマイナス0.4%である。このように実質は高成長率でも名目は2.6%にすぎず、それも輸出や一部大企業の設備投資増加によるものであり、本格的な内需拡大による景気回復軌道にのったものではない。この意味で不良債権早期処理をおこない、景気拡大への道をねらった骨太計画そのものは実質的に破綻したとみてよい。しかし、小泉「構造改革」路線をこの面からのみ判断してはならない。 2 1990年代の三つの特徴 1990年代は「失われた10年」「長期不況の時代」といわれているが、これはあくまでも一つの側面でしかない。90年代は三つの特徴をもっている。第一はいま指摘したように、長期的不況の10年である、年平均1%という成長率をみても明らかである。ただし10年間一貫して1%台の成長率ではなく、95、96年には3%台に達した点も見落としてはならない。この時に自民党政権は消費税率アップ(1997年4月)など巨額な負担を国民におしつけ、急速に景気は悪化した。つまり、自民党政権の景気対策の失敗がこの時代にはっきりとしてきた点もみておく必要がある。 3 足銀国有化の問題 小泉「構造改革」は90年代を通じてあらわれた長期不況、経済体質変化、対米従属強化の三つを総合的に解決するねらいがあったといえよう。しかし、それはあくまでも対米従属を軸として大企業中心体制強化をはかる限り、90年代の矛盾やゆがみを根本的に解決するのは不可能である。 おわりに 新生銀行の再上場と足銀の一時国有化問題は小泉「構造改革」のねらいの実態を明らかにしたものである。アメリカの方針を忠実に守り、外資系ファンドの利益を保証する一方、日本国民の生活や中小企業などを犠牲にするのが小泉「構造改革」そのものである。この「構造改革」のもと日本は経済・金融面と政治・軍事面が一体化しつつ、対米国家的従属を一段と深めてきている。この体制の最終の目標が憲法改悪であろう。アメリカとともに「戦争国家」となり、アメリカ世界戦略の有力なにない手となるのが、小泉政権の目標といえよう。小泉政権は同時に軍事面のみでなく、経済面でもアメリカの「双子の赤字」を必死となって支え、外資系ファンドの利益を最大となるよう努力しているのである。 (いまみや けんじ・会員・中央大学名誉教授) |
雇用・失業闘争の現状と課題 平川 道治 |
1 一地方(大牟田)からの考察 ◇ 失業者の実像
この基本要求を全面にたて、個別要求10項目の要求実現をめざしました。当局側は「福岡労働局独自で、就職支援プログラムを作り、地域の実情に合わせて取り組んでいる。」「求人開拓も2名の開拓推進員を配置し、常時企業訪問している。」「商工会議所ともタイアップし、ダイレクトメールを活用したアンケート調査などをしている。」「悪質企業には監督署と連体し、対応している。個別要求については、中身の改善を図りながら対応していく、労働局に上げるものは報告する。」「本日回答できない分については後日回答いたします」との対応でした。 ◇運動の全国展開に向けて ◇私たちの要求──失業者にまともな仕事と生活保障を! 2 今後の課題 失業者は今、困っています。今日、明日のお金が欲しい者がほとんどです。何日も運動に参加する事などできません。その限りでは、一人ひとりに対して、当面の生活設計の方向を示して応援していかなければなりませんが、私たちの運動を理解し、短期間の運動に参加することはできます。 ※自労OB(全日自労OB) ※公共分会 (ひらかわ みちはる・建交労大牟田支部) |
2003年度第2回常任理事会報告 |
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労働総研第2回常任理事会は、2004年1月24日、13時から17時まで、牧野富夫代表理事の司会で、労働総研2階会議室で開催された。 I 報告事項 1)労働総研三代表理事の「自衛隊のイラク派兵に反対する」声明について、藤吉信博事務局次長が経過報告し、討議の上、この問題については研究所の活動でも重視していくことが確認された。2)2004年1月8日行なわれた全労連との懇談について、大江洸代表理事から、お互いの組織が今年15周年を迎えるにあたり、記念行事について共同した取り組みを検討していくなど、懇談の内容について報告され、承認された。3)基礎理論・理論問題プロジェクトについて、浜岡政好常任理事から、第1回の会合で確認された活動予定に基づいて、研究を進めて行くとの報告があり、承認された。4)昨年より売れ行きが好調で増刷された全労連との共同編集による『2004年国民春闘白書』について、5)事務局の活動状況について、6)研究部会活動の状況について、および7)編集委員会の活動状況について、藤吉信博事務局次長が報告し、了承された。8)埼玉県労連との共同調査の状況について、大須眞治事務局長から、調査票に基づくアンケートが埼労連ではじまったなどの報告があり、承認された。 II 承認事項
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1月の研究活動 |
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1月の事務局日誌 |
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