[I 2005年度における経過報告]
1.労働総研設立15周年記念事業
労働総研の05年度における調査研究・政策活動は、設立15周年事業を中心的事業に位置づけながらすすめられた。04年度定例総会で承認された15周年記念行事は、(1)労働組合調査、(2)シンポジウムとレセプション、(3)独仏伊3ヵ国海外調査であった。05年2月16〜26日、斉藤隆夫常任理事を団長としておこなわれた独仏伊3国調査については、すでに05年度定例総会および研究例会で報告(『労働総研クォータリー』05年春季号。『労働総研ニュース』05年3月号参照)されているので割愛する。ここでは、(1)労働組合調査と(2)シンポジウムとレセプションの経過について報告する。
(1)労働総研・全労連共同調査「労働組合の活動実態と課題と展望」調査
労働総研と全労連とは、この共同調査をおこなうことを04年度定例総会と定期大会でそれぞれ確認した。調査目的は、21世紀初頭における労働組合運動の強化・発展の条件・要因を、大量アンケート調査とヒアリング(ケーススタディー)をつうじて、リアルに浮き彫りにすることであった。共同調査を成功させるため、労働総研と全労連とは共同で総合企画委員会を設置し、そのもとに総合企画事務局と調査担当者会議をおき、企画立案から調査研究、調査結果の分析・評価など、調査研究にかかわる全過程を緊密な協力・共同のもとに推進してきた。
本調査の具体的な経過については「3.プロジェクト研究」の項の「(1)労働総研・全労連共同調査」の項を参照されたい。本調査を土台にして次項のふたつのシンポジウムがおこなわれた。
(2)記念シンポジウムと記念レセプション
シンポジウムは05年度中に2回おこなわれた。ひとつは、05年11月11日、静岡県熱海市で開催された全労連の地域運動交流集会(11月10〜12日)の中日に、労働総研と全労連とが共催したシンポジウムである。集会初日、労働総研・全労連共同調査『労働組合の活動実態と課題と展望』(第1次中間報告)を会場で発表・配布した。
シンポジウムは冒頭、牧野富夫代表理事が共催者を代表してあいさつした。次に、労働総研・全労連の共同調査『報告』中間まとめを浜岡政好常任理事がおこない、その報告をうけたシンポジウム=「新たな試練と飛躍の可能性−これからどうする日本の労働運動」がおこなわれた。大木一訓代表理事、山路憲夫白梅学園大教授、堀内光子ILO駐日代表、坂内三夫全労連事務局長がシンポジストとしてそれぞれ報告し、会場参加者をふくめて討論された。コーディネーターは岩田幸雄全労連事務局次長・労働総研常任理事であった(『月刊全労連』06年3月号、『労働総研ニュース』05年11月号、12月号、06年1月合併号参照)。
ふたつは、05年12月11日、設立16年目に日本大学経済学部講堂でおこなわれた設立15周年記念シンポジウムである。シンポジウム冒頭、牧野富夫代表理事が主催者を代表してあいさつした。次いで、坂本修自由法曹団団長、熊谷金道全労連議長、ジャーナリストの斎藤貴男氏がシンポジウム=「労働行政の新自由主義的展開に対するわれわれの対抗軸を考える」のテーマで報告し、会場参加者も参加して討論された。コーディネーターは大木一訓代表理事。このシンポジウムは140人が参加し成功した。
記念シンポジウム終了後、日本大学経済学部本館で15周年記念レセプションが開催され、80人が参加して成功した。記念レセプション冒頭、主催者を代表して大江洸代表理事があいさつした。次いで、熊谷金道全労連議長、坂本修自由法曹団団長、笠井亮日本共産党衆議院議員の3氏が来賓のあいさつをおこなった。つづいて、黒川俊雄顧問があいさつし乾杯の音頭をとったのち、なごやかな懇談がおこなわれた。そのご、五十嵐仁法政大学教授(大原社研)、儀我壮一郎理事、清山玲茨城大学教授・理事、佐藤綾一建交労委員長、佐藤幸樹埼労連事務局次長、竹内真一労働者教育協会会長、内山昂理事(元事務局長)がそれぞれ一言スピーチをおこなった。最後に、牧野富夫代表理事が主催者を代表して閉会のあいさつをおこない、レセプションは閉会した。
15周年記念行事の成功をささえた重要な要因のひとつとして、労働総研と全労連の密接な協力・共同を推進した代表理事・常任理事会のイニシアティブによる企画・立案、その具体化のために協力を惜しまれなかった会員の奮闘、全労連関係諸組織の協力とともに、そのための諸準備と事務をささえた事務局の活動があったことは、特筆される必要があろう。
2.全労連との協力共同の強化
(1)日常的なコミュニケーションの強化・発展
設立趣意書にあるとおり全労連との「緊密な協力・共同のもとに、運動の発展に積極的に寄与する調査研究・政策活動を」前進させる課題が設立15周年事業としての労働総研・全労連共同調査=「労働組合の活動実態と課題と展望」調査によって実践的に具体化され深められた。この調査を成功させるために、労働総研と全労連との緊密な共同を体制的に保障するため、総合企画委員会を設置し、そのもとに総合企画事務局、調査担当者会議などをおき、企画・立案段階から、調査およびその評価・分析にいたるまで、調査活動の全過程をつうじて、労働総研と全労連との「緊密な協力・共同」をつらぬいてきた。
調査の『第1次中間報告』を土台にした全労連との共催シンポジウム「新たな試練と飛躍の可能性−これからどうする日本の労働運動」(05年11月)の実施についても、『第1次中間報告』のまとめ方、発表形態、記者会見の段取り、シンポジウムのすすめ方など、全労連と共同してねりあげてとりくんできた。全労連の06年度定期大会に間に合わせて発表した『最終報告書』のまとめにかんしても、特別に、全労連の組織局、単産・地方の組織担当者との評価・分析検討会を設定して議論し、その会議で出された補足ヒアリングもおこなうなどして、労働総研と全労連との日常的コミュニケーションの強化・発展を重視してきた。
(2)全労連のプロジェクト等への協力・派遣
全労連「パート・臨時などではたらくみんなのアンケート調査」への協力要請が全労連からあり、それに積極的に協力するため、村上英吾会員を派遣した。この調査は、02年におこなわれた「パート・臨時などではたらくみんなのアンケート調査」を基礎に、非正規労働者が労働者全体の3割を超えるという情勢のもとで、07年に実施される調査であり、労働総研としても重視すべき調査であり、ひきつづき協力していく。
(3)労働法制中央連絡会
この連絡会には、代表委員のひとりとして牧野富夫代表理事が、事務局委員のひとりとして大須眞治事務局長(代理として藤吉信博事務局次長)が参加し、財界・政府が一体となって推進する労働契約法制・労働時間規制緩和など労働政策の抜本改悪をめぐる情勢評価、政策検討、運動強化のための共同に参加している。
中央連絡会は全労連と共催で、06年6月28日、東京・文京のシビック・ホールで「こんな労働契約法はいらない!! みんなの集会」を開催し、労政審の内容を告発する300人集会を成功させた。当日上演された労政審の審議内容をリアルに告発した構成劇「今日の出来事、あべちゃんは見た、ド迫力!労政審」は、参加者の怒りを結集し、闘争勝利めざして意思統一する重要な集会となった。
(4)憲法改悪反対中央共同センター
04年度定例総会の方針にもとづき、「九条の会」の運動をあらゆる側面で支持し、9条破壊を軸とする憲法改悪を阻止する重要な運動の一環として、この共同センターに参加している。会員が所属する大学や研究機関における「九条の会」運動も発展し、全国の職場、地域、学園で結成されている「九条の会」は5,000を超えて前進している。東京・代々木公園で開催された「5・27許すな憲法改悪!国民大集会」には全国から5万人が結集した。このように、憲法改悪反対の世論と運動は大きくもりあがっている。しかし、自民党・公明党は5月26日、憲法改悪のための国民投票法案を上程した。この法案の強行採決を阻止したとはいえ、9月国会での継続審議となっており、憲法改悪策動の重大な局面を画すものとなっている。「共同センター」に結集し、「九条の会」運動を情勢の進展にみあって大きくひろげるために奮闘することが求められている。
(5)もうひとつの日本闘争本部との連携
全労連「もうひとつの日本闘争本部」が、06年2月20日に各界に呼びかけて開催した「懇談会」に参加した。そこで提起された要請にもこたえて、当研究所は「小さな政府」論の多角的解明をすすめている。
「今日における『小さな政府』政策と労働運動の課題」(大木一訓)、「アメリカ型『日本改造計画』の顛末―小泉『改革』は日本をどこへ導くか」(平河寛一)、「戦後日本財政の流れと『小さな政府』論」(安藤実)は、いずれも政治経済動向研究部会の公開研究会などで報告・討議したものを、『労働総研ニュース』で発表した。沖縄県労連「もう一つの日本をめざすシンポジウム―『小さな政府』は国民に何をもたらすか?―安全・安心の社会をめざして―」に藤吉信博事務局次長が参加し、報告した。
(6)産別記念・労働総研資料室の開設
全労連、平和と労働センター・全労連会館の協力で、06年6月1日、平和と労働センター・全労連会館開設5周年記念式典にあわせて、労働総研に「産別記念・労働総研資料室」を開設した。この資料室は、平和と労働センター・全労連会館が管理してきた産別関係の1次資料をふくむ貴重な資料を収蔵している。より体系的な整理・整備作業の上、会員および関係者の利用を可能にするような公開方法を検討中である。
3.プロジェクト研究
(1)労働総研・全労連共同調査「労働組合の活動実態と課題と展望」
全労連との緊密な協力・共同のもとに当調査を推進する体制的保障として、総合企画委員会・総合企画事務局・調査担当者会議の3機構を全労連と共同で設置した。総合企画委員会のメンバーは、労働総研が大江洸・大木一訓・牧野富夫の3代表理事、大須眞治事務局長、浜岡政好常任理事、藤吉信博事務局次長、全労連が坂内三夫事務局長、岩田幸雄事務局次長・総合労働局長、井筒百子調査政策局長、寺間誠治組織局長、伊藤圭一調査政策局次長である。総合企画事務局メンバーは、労働総研が大須眞治事務局長、浜岡政好常任理事、藤吉信博事務局次長、唐鎌直義常任理事、藤田実常任理事、金澤誠一理事、小澤薫会員、佐藤嘉夫会員、内藤三義会員、村上英吾会員、宮寺良光会員、全労連が伊藤圭一調査政策局次長、中島康浩賃金部長、小林正彦組織局員、国吉綾乃組織局員である。
調査担当者会議のメンバーは、労働総研が北海道担当として椎名恒・山本補将、東北担当として佐藤嘉夫・小池隆生、関東担当として大須眞治・小澤薫・唐鎌直義・宮寺良光・藤田実・藤吉信博・村上英吾、愛知担当として大木一訓・猿田正機・伊藤欽次・西野賑郎、関西担当として浜岡政好・金澤誠一・内藤三義、四国担当として丹下晴喜、福岡担当として久野国夫の会員、全労連が総合労働局、総合組織局、加盟単産および組織担当、地方調査担当者である。
この3機構での討議にもとづいて、調査研究目的、調査方法、組織調査・組合員調査・未組織労働者の調査にかんする3種類のアンケート用紙の検討・作成と分析、単組(支部・分会)役員のヒアリングの実施と、合宿による総合共同検討会(05年9月15日〜16日)をへて、『第1次中間報告書』を作成し、全労連地域運動交流集会(05年11月)で発表した。
06年にはいり、最終報告のための3種類の大量分析とヒアリングのまとめ作業をおこなうため、最終報告のための担当者会議(06年3月)、全労連との共同での分析・評価会議(06年4月)をおこない、補足ヒアリングを含む『最終報告書』を06年7月19日発表して、記者会見をおこなった。
なお、この「共同調査」の意義、意味・内容をわかりやすく解説したパンフレット形式の出版を検討中である。
(2)「基礎理論・理論問題プロジェクト」=「ナショナル・ミニマム問題整理・検討プロジェクト」
小泉自民党・公明党連立内閣が強行する大企業の利益最優先、労働者・国民に対する搾取と収奪の強化政策のもとで、大量解雇、不安定就業者の増大、賃金・労働条件切り下げ、失業者の増大、消費税をはじめとする税収奪や年金改悪、介護・医療制度の改悪などによって、労働者・国民の生活はかつてない窮乏化の度合いを深めている。8年連続して3万人を超える自殺者の多くが経済的理由によるものであり、健康保険証の取り上げ、生活保護拒否による餓死者が後を絶たない。新自由主義政策を強行する小泉「構造改革」のもとで、憲法9条破壊攻撃とともに25条破壊が急激に進行している。
当プロジェクトは、憲法25条を基礎とした国民生活の最低(ナショナル・ミニマム)基準を国民共同の運動で確立するための基礎的政策提起をおこなうことを目的に、研究活動をおこなってきた。プロジェクトメンバーとして中心的役割を果たされた島田務会員(全国生活と健康を守る会連合会前会長)は、06年5月31日逝去された。当プロジェクト報告書は『労働総研クォータリー』2006年春季号・夏季号の合併号として発表する。
4.研究部会活動
各研究部会は05年度をもって終了した。各研究部会活動についての概括は、『労働総研クォータリー』設立15周年記念号を参照されたい。各研究部会の開催状況は以下のとおりである。
(1)賃金・最低賃金問題研究部会(10回)。(2)労働時間問題研究部会(6回)。(3)女性労働研究部会(10回)。(4)中小企業問題研究部会(6回、内公開研究会5回)。(5)国際労働研究部会(6回)。(6)政治経済動向研究部会(4回、内公開研究会1回)。(7)関西圏産業労働研究部会(5回)。(8)労働運動史研究部会(7回)。(9)社会保障研究部会(1回、内公開研究会1回)。
イングリッシュ・ライティング・スクール(EWS)(11回)。
5.研究例会・公開研究会
(1)研究例会
i)労働総研・全労連共催シンポジウム「新たな試練と飛躍の可能性−これからどうする日本の労働運動」(05年11月)
ii)05年12月11日、設立15周年シンポジウム「労働政策の新自由主義的展開に対するわれわれの対抗軸を考える」(坂本修自由法曹団団長、熊谷金道全労連議長、斉藤貴男ジャーナリスト、大木一訓代表理事)
iii)06年3月29日、ナショナル・ミニマム大綱を考える(浜岡政好常任理事)
(2)公開研究会
i)05年9月7日、 中小企業問題研究部会「CSRと中小企業問題について」角瀬保雄理事(法政大学名誉教授)
ii)05年11月19日、社会保障研究部会「アメリカの医療は今どうなっているのか」三成一郎社会保障研究センター事務局長
iii)05年12月20日、中小企業問題研究部会「日本中小金融機関の現状と課題」泉康弘全信労委員長/「中国における中小企業と金融問題」于金黒竜江省大学経済学院教授
iv)06年3月6日、中小企業問題研究部会「ドイツにおける金融投資家の活動について」平澤克彦会員(日本大学教授)
v)06年3月29日、政治経済動向研究部会「小泉内閣の『小さな政府』論〜財政論的検討」安藤実会員(静岡大学名誉教授)
vi)06年5月26日、中小企業問題研究部会「東京の商店街動向と街づくりの課題」宮寺良光会員(中央大学大学院)
vii)06年7月11日、中小企業問題研究部会「東アジア経済と日本の中小企業─『中小企業白書』を斬る」相田利雄会員(法政大学教授)
6.研究所活動のあり方についての検討
設立15周年記念を契機に、当研究所の調査研究活動、政策提起の能力を情勢の要請にこたえて発展させるため、03年度定例総会決定にもとづき研究所活動のあり方について「検討委員会」を設置した。「検討委員会」は常任理事会に6回にわたって「中間報告」を提出し、検討をおこなってきた。また、プロジェクト・研究部会代表者会議でも議論をかさねて、04年度および05年度の定例総会でも討議をふまえ、06年度定例総会で新活動方針案にもとづく研究所の調査研究・政策活動をおこなうことになった(詳細は[III 2006年度事業計画]の「1.研究所活動の新方向」を参照のこと)。
7.政策提言・出版・広報事業
(1)浜岡政好常任理事「実態調査からみえる労働組合の現在と未来−全労連・労働総研『労働組合』調査を読む−」(『労働総研ニュース』05年11月号、12月号、06年1月合併号)
(2)労働総研・全労連共催シンポジウム「新たな試練と飛躍の可能性−これからどうする日本の労働運動」(05年11月、『月刊全労連』06年3月号)
(3)15周年記念シンポジウム「労働政策の新自由主義的展開へのわれわれの対抗軸を考える」(05年12月、『労働総研クォータリー』2006年冬季号)
(4)15周年記念労働総研・全労連共同調査「労働組合の活動実態と課題と展望」『第1次中間報告書』(05年11月)および『最終報告書』(06年7月)
(5)『2006年国民春闘白書』(学習の友社、05年11月)
(6)『世界の労働者のたたかい2006―世界の労働組合運動の現状調査報告』第12集、06年4月。第12集から、(1)日本を報告に加え、(2)各国の報告の冒頭にミニデータ集を掲載するなど、より身近に活用できるよう工夫・改善をおこなった。
8.地方会員の活動参加
地方会員の研究所活動への参加は、全労連と共同で実施してきた「労働組合の活動実態と課題と展望」調査で具体化するという貴重な一歩を踏み出すことができた。これは単に労働総研活動への地方会員参加というにとどまらず、地方労連との協力・共同の強化という意味でも重要である。
9.事務局の体制強化と財政執行状況
財政事情にともなう常駐事務局員の減少をカバーするため、代表理事も参加して開催する拡大事務局会議を定着させ、15周年記念事業等成功のため、代表理事、常任理事会のイニシアティブのもとに、節約と効率的な財政運営に努力してきた。15周年記念行事も成功裏に実行できたが、今後の研究所活動の発展を保障するための事務局体制の強化を検討する必要がある。
10.神尾京子会員の死去と財産遺贈
神尾京子会員は、06年5月3日死去された。神尾会員の遺言により、労働総研へ財産を遺贈されることになっている。具体的には遺言執行者である黒岩容子弁護士と相談中である。
なお、神尾会員の遺言により、解放運動無名戦士の墓に埋葬する手続きをとることにした。
[II 研究所活動をめぐる情勢の特徴]
1.情勢の重大な転換点に立って
対米従属の深化過程
1990年代の半ば以降、わが国の経済・政治・社会をめぐる情勢は大きな転換を経験してきた。それは、アメリカ主導の「グローバリゼーション」と深く関連した過程であった。その転換過程はいまどこまで来ており、われわれはいまどのような選択肢に直面しているのであろうか。
「新自由主義」的な「構造改革」は、アメリカの圧力のもと、第二次橋本内閣の「六つの改革」として開始された。その政策を引き継いで、「構造改革」を強力に徹底して推進するようになったのは、いうまでもなく小泉政権である。
「金融自由化」をテコとする小泉「構造改革」のもとで、日本経済は、米日多国籍企業の支配する投機的な資本主義=「株主資本主義」へとその体質を変えられてきた。政治の分野においても、多国籍企業の支配は、権力中枢を直接その影響下に組み入れるほど拡大・強化されてきた。かれらの利益を代表する専制的な小泉政権が、規制緩和と国民負担増政策を強行し、著しい「格差社会」を作り出してきたことは周知の通りである。
「新日本的経営」による労働現場の変化も、こうした多国籍企業支配の強化のもとで生じていることである。従来の年功賃金や「終身雇用」にかわって賃金の「成果主義化」や雇用の「流動化・多様化」が急速に広がり、労働時間制度の空洞化が際限なくすすんできたことは周知のとおりである。そのもとで「フリーター」の増加など、かってない若者の雇用問題の深刻化も生じている。今やあらゆる労働者層をまきこんで、雇用・賃金・労働時間に対する三位一体的攻撃が展開されるようになった。そこでは戦後民主主義が構築してきた「労働のルール」が全面的に無視され、劣悪で差別的な雇用・労働条件が一方的恣意的に押しつけられるようになっている。
重要なのは、「構造改革」の諸政策が、日本を経済的にも軍事的にも外交的にもアメリカと一体化させていこうとする、安保体制再構築の動きと表裏をなして展開されてきたことである。小泉政権と財界は、アメリカの覇権的戦略に世界的規模で加担する政策をとるようになり、従属的な軍事大国への道を公然とあゆむようになった。自衛隊の海外派遣、「多国籍軍」戦闘部隊への燃料供給、米軍のグローバル再編のための巨費負担、ミサイル防衛構想の推進など、軍事費の国民負担はすでに際限もなく膨張しつつある。また、日米の指揮命令系統の統合や地球規模的な共同作戦体制構築のもとで、日本がアメリカの戦争に巻き込まれる危険性はますます増大するようになった。
こうした一連の政策展開の帰結として、いまや日本の支配層は、憲法、教育基本法、労働法制などの抜本的改正によって、日本社会の基本的な枠組みを全面的に改変しようと意図するようになった。それによって、過去5年にわたる小泉「改革」を集大成・制度化するとともに、「小泉後」は米日多国籍企業の諸政策をさらに全面的に推進する体制を固めようというのである。また、それによって、労働者・国民の抵抗とたたかいをくじくような体制をつくろうというのである。
小泉「改革」の矛盾の噴出と破綻
しかし、今日の情勢の最大の特徴は、小泉政権のすすめてきた諸政策が矛盾の噴出と破綻に直面し、多くの国民の批判をまねくようになったことである。権力中枢までまきこんで多発する「マネーゲーム」の不祥事、規制緩和が生み出した不正・腐敗の横行、雇用・社会保障・医療・介護・障害者福祉などの破壊がもたらしている政策破綻、「格差社会」のもとでの膨大な極貧層の広がり、地域や家庭が破壊されるなかでの少年犯罪の増大・凶悪化、職場における「パイの理論」の破綻と労働者の経営不信の高まり、そして、国民が将来への希望をもてなくなっているなかでの少子化問題の深刻化、等々―これらはその一つひとつが小泉「構造改革」の本質を鋭く告発するものとなっている。小泉「改革」に対する国民の批判が、アメリカ国内および世界でのブッシュ政権にたいする批判と連動していることも重要である。
こんにち国民の政治に対する不信・怒りはきわめて深い。国会で絶対多数をにぎる与党も、その不信・怒りに直面して、今国会では重要法案の成立を軒並み先送りせざるをえなかった。他方で国民の怒りはいま、「第二自民党」といわれる民主党をもまきこんで、次のような野党四党の緊急声明文(6月24日)を発表させるところまで情勢を動かしている。それは、「5年間の小泉政治は、格差拡大、国民負担増、社会の荒廃、外交の破綻をもたらし、地域と国民を疲弊させた」として、5項目の合意事項((1)福井総裁の即時辞任、(2)米国産牛肉の輸入再開の取りやめ、(3)イラクからの航空自衛隊を含めた自衛隊全部隊の撤退、(4)米軍再編への経費負担の中止、(5)国会軽視の姿勢の是正)を小泉首相に申し入れるものとなっている。
全労連は来年07年7月の参議院選挙を目標に、「小さな政府=大きな国民負担」に反対する「もう一つの日本」をめざす運動を展開しているが、政府・与党も、来年の地方選挙および参議院選挙を目途に、憲法改正のできる体勢をつくりあげようとその動きを強めている。ここ1年ばかりの間に、日本の労働者・国民の将来を左右する大きな選択の機会がやってくることは確実である。その選択のカギを握っているのは、国民の大多数をしめる労働者階級であり、労働運動である。
今日の日本の労働者は、広く世界と日本の情勢に関心をもち、政治や経済のゆがみを正すことに大きな関心と意欲をもっている。今後の緊迫した情勢のなかで、労働運動がそうした労働者の関心と意欲を広く引き出し発展させるならば、政治の民主的な転換への展望も開かれていくにちがいない。
今後の労働総研の諸活動のなかでは、情勢の推移に留意しつつ、支配層の実態分析や「新自由主義」的諸政策の矛盾解明を系統的におこなうとともに、労働運動発展の条件を具体的にあきらかにしていく努力を強めなければならないであろう。
2.今日における労働者・国民状態の特徴
異常な状態悪化
今日の雇用・所得破壊の原点をたどると、1995年の日経連「新時代の日本的経営」にまでさかのぼる。それからほぼ10年、その後半には小泉政権が「新自由主義」の諸政策を強行し、労働と生活の破壊を決定的におしすすめてきた。
98年から大不況が始まり、大規模なリストラと規制緩和が強行されていくが、01年に誕生した小泉政権は、不良債権処理を最優先する政策をとり、財界とともに大規模な労働者の解雇をおしすすめた。同時に職場労働者に対しては、成果主義と個別管理強化のもとで、賃下げや長時間過密労働がおしつけられていった。他方では、規制緩和政策によって契約社員、派遣労働者、パートなどの非正規労働者の利用を増やし、正規労働者を非正規労働者に置き換えていく政策を推進した。その結果、歴史的にも例のない、あらゆる労働者層にわたる異常な雇用・労働条件の悪化が引き起こされてきた。労働者たちは心身をすり減らし、ストレスがたまり、職場ではメンタル・ヘルスが大問題となっている。
パート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの低賃金・無権利な非正規労働者は、いまや雇用者総数の33%(05年)を占めるまでになった。若年層には「フリーター」、「アルバイター」などの不安定雇用労働者が大量に堆積されるようになった。これら非正規労働者のほとんどは有期雇用契約であり、その雇用の不安定さを利用して多くの無法・不法が横行し、非人間的な差別が押しつけられている。
非正規労働者の8割は年収150万円以下の所得であり、極端な低賃金労働を強いられている。しかも非正規労働者の大多数は女性労働者であり、彼女たちのうえには多くの家事労働や育児・介護がのしかかっていることを忘れてはならない。非正規労働者のあいだには加齢とともに結婚できない層が作り出され増大しており、少子化や技術の継承難など深刻な社会問題の一因となっている。
このような労働者状態の急速な悪化が、国民全体を貧困化にみちびく大きな要因となっているのである。日本の貧困率は15.3%(OECD、05年2月公表)で、先進国ではアメリカの17.1%に次ぐ高さになっており、世論調査でも「生活が苦しい」と答えた世帯は55.8%(04年国民生活基礎調査)と過半数を超え、貯蓄ゼロの世帯比率は23.8%(05年、日本銀行調査)に上り、生活保護世帯が100万戸を突破し、教育扶助・就学援助を受ける児童・生徒数や国保滞納世帯が増加するなど、多くの指標が貧困の深化・広がりを動かしがたい事実として示している。ごく最近(6月20日)のOECD対日経済審査報告は、いまや日本は「OECD諸国の平均よりも格差の大きい国になった」と指摘している。
所得再配分機能の喪失と格差拡大
貧困の深化・広がりにもかかわらず、小泉政権下の社会保障や税制はその所得再配分機能を急速に失ってきたばかりでなく、かえって格差拡大の要因として作用するようになってきた。実際、医療費の自己負担増大、介護の切り捨てと費用負担引き上げ、高齢者や障害者に対する一連の負担増押しつけ、大企業・大資産家優遇税制のもとでの定率減税廃止と地方税の引き上げ、等々は、近い将来実施されようとしている消費税増税とともに、貧困化と格差拡大をいっそう加速・応援悪性化させる政策となっており、広範な国民の貧困からの脱出をますます困難にしている。
なかでも最近の注目すべき動きは、障害者自立支援法に見られるような、社会的弱者に対する公的負担を否定し、公的年金から費用負担を徴収するといった、弱者攻撃の政策が登場していることである。それは、社会保障のあり方を根本から転換させるものであり、社会保障を事実上弱者いじめの徴税制度として機能させていく政策に他ならない。弱者対策を社会的浪費と見なす多国籍企業の論理が、いよいよ露骨に顔を出すようになった、と見るべきであろう。
政府は、最近の「景気拡大」が国民の個人消費増大にもつながりつつある、と強調している。たしかに大企業を中心とする史上空前の高収益が一部に巨万の富を手にする富裕層を生みだし、かれらを中心とする個人消費が拡大していることは事実であろう。また、一部の労働者層について、従来の連続的な賃金減少傾向にある程度ブレーキがかかったり、「人手不足」との関連で一定の賃金上昇が見られる状況はあるかも知れない。
しかし、日本経団連の集約によっても、06年春闘における賃上げ結果は、前年にくらべほとんど増加を見せなかった。全国・全世帯で見た消費支出は引き続き減少しており、小売業販売額も足踏み状態である。さらに可処分所得の対前年実質増加率(総務省統計局)で見ると、05年平均はマイナス0.8であり、06年1〜4月はいずれもマイナスの4.0、2.7、5.9、4.6と、かえってその減少率が昨年よりも大きくなってきているのである。全体として、国民の大多数の貧困化と一部資産家たちの富裕化とへの格差拡大は、大企業中心の「景気拡大」のもとでさらに加速されていると見なければならない。
格差拡大の傾向は、職場労働者たちの間でも作用している。今日ほとんどの職場では、職制、熟練工、一般社員、期間工、派遣、請負、応援、パート、アルバイト、外国人労働者など、雇用形態も経験も年代や性別や文化も異なる、さまざまな労働者が一緒に働いており、しかもその組み合わせは頻繁に変化している。さらに問題をいっそう複雑にし困難にしているものに、「07年問題」とよばれる、業務を中心的に担ってきた団塊世代の大量退職問題もある。
こうして今日の職場では、熟練・技能の継承はもとより、互いの意思疎通をはかることさえ困難となってきている。この点では、雇用差別や成果主義が、労働者の間の不信と対立を助長し、胸襟をひらいた相互理解がほとんど不可能な状況をつくりだしていることも重視されねばならない。そうしたなかで、少なくない労働者が、肉体的にばかりでなく精神的にもむしばまれ、しばしば過労死や自殺に追いやられるほど疲弊しているのである。
支配層は、こうした異常なまでに分断・分裂させられ疲弊した労働者階級の状態を利用しながら、公務員と民間労働者、正規労働者と非正規労働者、男性と女性、現役世代と高齢者、労働者と自営業者、等々の間に不信と対立をつくりだしている。これに反撃して、労働者の間の格差を縮小していくにはどうしたらよいか、互いの共通の利益や目標をどこに求めていったらよいか、労働者たちがその活力を回復するためには何が必要か、等の問題を具体的に解明していくことは、労働総研の重要な研究課題であろう。その研究は、「格差社会」全体の是正方向を明らかにすることにもつながっていくに違いない。
3.御手洗財界の登場と「日米一体化」政策の推進
「奥田財界」とは何であったか
本年5月、日本経団連会長はトヨタの奥田氏からキヤノンの御手洗氏にバトンタッチされたが、奥田財界は戦後日本の財界のなかでもきわめて異常な財界であった。
第一に、それは、財界を小泉政権や与党自民党と文字通り一体化させる政策を推進してきた。政策要請や政治献金を政権与党に集中させたばかりでなく、経済財政諮問会議をはじめとする国政を左右する諸機関に次々と財界代表をおくりこみ、各省庁官房から自民党総合政策研究所にまで財界首脳会社からスタッフを出向させ、さらには与党支援の選挙運動に参画するなど、「民主導の社会構築」と称して財界支配の専制政治を露骨に構築してきた。そのことによって財界は、小泉政権のあらゆる政策について事実上責任を負わなければならない立場におかれることともなってきた。
第二に、奥田財界は、日本に対するアメリカの経済的政治的支配を積極的に容認し、その支配を屈従的なレベルにまで深化させてきた。株式市場での外資支配の容認、外資系企業に対するさまざまな優遇措置、日本経団連会員への外資系企業受け入れ、「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」に忠実に従った、わが国経済・社会改造の推進、民営化の推進と多国籍企業への利権の提供、アメリカ軍への「思いやり予算」の向こうを張るアメリカ不況企業への「気配り対策」、等々を見ても、その屈従ぶりがどれほど進行しているかがわかる。小泉政権と一体となったこの対米屈従政策は、国際的にはアメリカの利益を代弁する政策となり、アジアでも中東でも多くの国々を敵にまわす政策を展開することとならざるをえない。中国・アジアや中東への経済的依存がきわめて高いにもかかわらず、自ら国際的に孤立する政策に固執する小泉政権に、財界は全面的に支持を与えてきたのである。
第三に、上記と関連して重大なのは、財界がこの間、9条をはじめとする憲法改悪を先頭に立って支援するとともに、実質的な改憲を次々と具体化してきたことである。とくに、武器輸出禁止三原則のなし崩し的廃止、宇宙空間の平和利用から防衛利用への転換、生物・化学防護をふくむ日米防衛技術協力の推進、などが次々に既成事実化されてきていること、アメリカの産軍複合体が日本企業をまきこんで拡大・強化されてきていることに注目する必要がある。そうした財界・政府による政策展開は、アジアの国々の間に、日本軍国主義に対する警戒感を急速に高める要因となっている。
第四に、「奥田ビジョン」等に見るように、財界がこの間推進してきた日本社会改造政策は、明らかに労働者・国民の生活や権利の水準を切り下げることを意図してすすめられてきた。財界・小泉政権による労働の破壊、地域経済の破壊、社会保障・公共サービスの破壊のもとで、教育をふくむ格差拡大が急速に進行してきたが、それらは、たんなる当面の不況対策・コスト削減策の結果として生まれているものではない。その背景には、貿易立国から交易立国へ、Made in JapanからMade by Japanへ、平等教育からエリート教育へ、「福祉国家」から「小さな政府」へ、等々の新自由主義的な多国籍企業戦略がある。財界がそうした戦略を採用・追求するなかで、労働者・国民のかってない状態悪化が生じているのであり、少子化が現実に民族の存立を脅かすほど深刻化してきているのである。これは、まさに国民の利益に対する真正面からの挑戦である。その本質は、最近の「格差社会」弁護論の展開のなかで、いよいよ明確になってきたといえる。
昨年9月の総選挙で自民党が勝利してからの奥田財界は、公的年金一元化、医療制度改革、労働法制改悪、住宅・土地税制改正、環境税反対、IT促進税制延長、等々の注文を「モノに憑かれたように」次々と政府に突きつけ、その早急な実施を迫ってきた。その傲慢な姿勢は、与党議員にさえ眉をひそめさせるものであった。
「御手洗財界」が直面する矛盾
「御手洗財界」も、基本的には以上に見た「奥田財界」の政策を継承していくものと見られている。しかし、財界を取り巻く今日の情勢は、その継承を簡単には許さない厳しいものとなっており、それを反映して財界のなかでも矛盾が表面化している。
一つは、大企業の不祥事がいっこうに止まず、不良企業に対する財界の甘い対応が問題となってきたなかで、ライブドアや村上ファンドに見るように、いよいよ小泉「構造改革」の中枢部分で不正が発覚しはじめたことである。そして問題は、金融投機資本の活動に対する(さらには小泉「構造改革」に対する)批判が高まるなか、財界・支配層の事件への対応が分かれていることである。
本年5月1日施行の新会社法を追い風に、今後日本企業を対象としたM&Aを外資もまじえて大規模に推進しようとしている勢力は、最近の事件が投機資本の活動を制約する結果にならないよう、引き続き規制緩和の推進を主張している。しかし、アメリカ的経営や国際金融資本の投機活動とは一線を画しつつ、より地道で安定した経済運営を求める勢力は、投機活動に対する厳しい規制を要求するようになっている。ちなみに御手洗氏は、村上ファンドについては「きわめて悪質」だと批判しながらも、小泉「改革」については支持すると表明している。
二つには、靖国神社参拝問題で経済同友会が明確な小泉批判を打ち出したように、歴史認識やアジア戦略をめぐっても、財界・支配層内部には深い亀裂のあることが表面化してきた。それは、対米関係とも連動して、国際社会における日本の基本戦略にかかわる問題であるが、日本経団連はその点で身動きできない状態に追い込まれている。
まちづくり三法の見直しをめぐる日商との対立、外国人労働者の受け入れをめぐる経済同友会との政策の不一致など、日本経団連は他の分野でも指導力を発揮できない問題をかかえるようになっている。御手洗体制のもとではじまった財界組織のリストラともあいまって、今日の日本経団連は財界総本山としての「存在感」を急速に低下させつつあるのではないか、と憂慮されてもいる。こうしたなかで、政権とは一定の距離をおいた財界運営を心がける、との御手洗氏の所信も伝えられている。
三つには、長年にわたるリストラや成果主義のもとで、職場における士気の低下、心の病の広がり、熟練・技能の継承難と技術者養成の立ち後れ、指揮・命令系統の破綻、製品の品質低下、リコールの激増など、生産システムや事業そのものが存立の危機におちいる事態が、多くの企業に広がりはじめたことである。大企業の史上空前の高収益のもとでは、労働者の不満や怒りが高まり、労働運動も活性化しはじめている。日本経団連が06春闘で従来の賃下げ政策に一定の手直しを行ない、「新たな時代の企業内コミュニケーションの構築に向けて」(06年5月)を提言したのも、最近大企業が「企業価値の再評価」運動や「職場コミュニケーション総点検」活動をすすめて、労働者の新たな取り込みに努めているのも、上記のような背景があるからである。
こうした諸矛盾の増大にもかかわらず、御手洗財界はひきつづき小泉=奥田「改革」を踏襲するとしている。労働関係についても、成果主義による賃金抑制や労働法制の全面改悪による労働ルールの破壊など、労働者・労働組合攻撃の諸政策を推進しようとしている。しかし、そこには矛盾や困難を解決していく展望も成算も示されてはいない。
とはいえ、御手洗財界による「改革」は、たんなる踏襲を超えるものとなる可能性がある。たとえば、発足早々の御手洗財界がいま力を入れているのは、「15分野230項目、重点要望40項目」の「規制改革要望」である。そのなかでは、「社会的規制の見直しや官製市場の開放については緒についたばかりであり、個別の規制改革に関する重要課題はなお山積している」として、「『公』の領域を新たに民に開放する市場化テストの制度整備」や「構造改革特区」の制度改善などへの取り組みを「小休止や後退は許されない」と激しく政府に具体化を迫っている。焦りにも似たその論調には、アメリカ政府の対日要望書を彷彿とさせるものがある。背景には、日米経済の先行きについての不安(いわゆる「不透明感」)があるといってよいであろう。
経済情勢悪化の兆し
政府・財界は今日の経済情勢を「改革と成長の好循環がはじまった」などと評価しているが、最近の株価や国際商品の大幅下落傾向にみるように、経済情勢は好調どころか重大な困難におちいる恐れか出てきている。その兆候は、(1)石油価格の高騰などで消費者物価がじりじりと上昇し、医療費、介護料、増税などの負担増が重くのしかかるなかで、個人消費の伸び悩みや減退が見られるようになったこと、(2)アメリカ経済の先行き不安や円高で、輸出の伸びも低迷していること、(3)外資の投資資金引き揚げで大幅な株安が続くなか、設備投資にも勢いが失われてきたこと、(4)靖国問題などでの外交摩擦が、いよいよ中国・韓国をはじめとするアジア諸国との経済関係にも大きな否定的影響を及ぼすようになってきたこと、(5)そして、先進諸国も産油国や新興諸国も、世界中がアメリカ経済やドルの先行きに大きな不安をいだくようになるなか、日本経済へのとりわけ大きな打撃が現実的な可能性として浮かび上がってきたこと、等に見ることができる。
だが財界・政府は、景気回復を口実に、医療改悪、増税、公務員削減、等々の国民負担増政策を強行してきている。そのことが、かつての橋本内閣の時以上に、経済情勢の悪化を加速させ、国民生活に甚大な被害をもたらす可能性が出てきているのである。
「御手洗財界」の危険性と脆弱性
日本経済を牛耳るわが国大企業の中には、最近、外資系多国籍企業に変わるものが少なくない。御手洗氏もそうした外資系企業のトップである。われわれは、今日では「財界総理」の地位に外資系企業の経営者が座ることとなったことに注目する必要がある。日本経団連は自公政権に民主党までまきこんで、外資系企業にも政治献金する自由を保障しようとしており、いまや「米日多国籍企業の共同委員会」となった財界は、経済的にも政治的にも軍事的にも、米日一体化をおしすすめる司令塔になろうとしている。
国民生活を顧みることのない諸政策を推進するうえで、それは「奥田財界」以上に「有能」となるかも知れない。しかし、国内に有力な産業基盤も政治的支持基盤ももたない御手洗氏は、アメリカからの圧力を頼みに、国民からは支持されることのない「日米一体化」政策を推進することとならざるをえないであろう。財界は、御手洗氏のもとで自らの存立基盤を決定的に掘り崩していくことになるのか、きびしい選択を迫られるに違いない。労働総研は、こうした財界の動向を的確にとらえ、従来にも増してその反国民的な諸政策を機敏に批判していく必要がある。
4.労働組合運動が直面する課題
日本の労働組合運動は、過去5年にわたり、ブッシュ政権と結託した小泉政権および奥田財界のはげしい攻勢のもと、きわめて困難なたたかいを強いられてきた。あらゆる権力機構とマスコミを動員し、経済支配の網の目を張りめぐらし、「世論」を駆り立ててつくりだした「劇場型政治」のなかで、労働組合運動は、「改革」に反対する「抵抗勢力」の既得権擁護運動だとして、袋だたきにあった。
やりたい放題のリストラやタダ働き残業が横行し、失業・不安定雇用が激増するなかで、賃上げも時短も経済闘争はほとんど成果をあげることができず、制度要求のたたかいも改悪に次ぐ改悪をいくらかでも押しとどめるのが精一杯という状況が続いた。ストはもちろん要求提出や団交でさえも姿を消すのではないかと危惧され、財界は春闘終焉を何度も宣言した。困難の増大とともに組織の減少がすすみ、労働組合は財政危機にも直面するようになった。
変化の特徴
だが、小泉政権退場の時を迎えたいま、労働組合運動をめぐる状況は大きく様変わりしている。
第1に、春闘は終焉しなかった。職場・地域における組合運動は、力をつけて生き残り、要求組織や団交をより多面的に高度に発展させながら、運動や組織の前進をかちとりはじめた。それを土台に「賃上げ春闘」への国民的理解を広げ、最低賃金、パート均等待遇、公契約運動などで一定の前進をかちとるようになった。そして06年春闘では、連合系組合をも巻き込みながら、「すべての労働者の賃上げと国民の生活最低保障を実現する賃金闘争」があらためて提起され、たたかわれるようになった。
第2に、不払い残業の摘発・是正や過労死基準改善の運動が前進し、行政基準を改善させ、財界に悲鳴をあげさせるほど是正措置をかちとるなど、大きな成果をかちとるようになったことである。そこでは、官・民労働者の協力、産別・地域の運動の連携、研究者・医師・弁護士などの運動への協力・参画が恒常的に組織され、行政をもまきこんだ「安全と安心」の地域づくり運動が前進している。この点では、最近の「アスベスト被災の完全救済」を求める運動なども非常に注目される。
第3に、リストラとのたたかいに、いくつもの重要な成果をあげるようになったことである。偽装解散、子会社や関連企業を隠れ蓑にしたリストラ、高齢者雇用安定法を悪用した選別解雇や労働条件切り下げ、等々に反撃し、解雇を撤回させ、組合つぶしをはねかえすたたかいを前進させることができるようになった。
第4に、春闘解体攻撃に協調してきた労資協調主義組合の間にも、春闘で「ベースアップ要求」を提出するなど、一定の積極的な変化がみられるようになったことである。連合系組合の場合には、ナショナル・センターと産別、個別企業別組合では事情の異なる場合が多く、過大評価することはできないが、労基法改悪反対のたたかいで「客観的理由なき解雇は無効」という成果を共同して獲得したように、連合系労働組合とも共通の要求にもとづく事実上の共同が前進するようになったことは重要である。
第5に、組織拡大の取り組み、とくに非正規労働者の組織化を本格的にすすめる運動が開始され、いくつもの重要な成果を生み出しはじめたことである。なお組織の減少から増勢への転換がかちとられるまでには至っていないが、注目されるのは、ナショナル・センターと単産・地方が一体となった組織建設がすすめられるなかで、同じナショナル・センターに結集する組織労働者の有機的な協力・共同関係と統一闘争が発展するようになり、さまざまな新しい運動の芽と可能性が生み出されていることである。そこには、政府・財界の攻勢に対する受け身の運動ではなく、職場・地域から攻勢的な運動への転換がすすんでいる。
第6に、労働組合の内外にわたる共同の運動が著しい広がりをみせるようになったことである。たとえば、(1)医療制度改悪をはじめとする社会保障危機をはねかえす運動で、各地の医師会、医療・福祉・障害者団体、社会保障協議会などとの共同の運動が前進するようになっている、(2)「小さな政府」政策による公務・公共サービスの切り捨てに対して、住民とともにきわめて具体的な検証と改善要求を対置してたたかっていく運動が発展しつつある、あるいは、(3)韓国やアメリカなど海外の運動とも交流・連帯を発展させながら、「市場万能主義」の政策へ反撃や新しい社会経済的諸条件のもとでの組織化の道を共同してさぐるようになった、といった動きである。全労連・春闘共闘の運動は、内外の運動の共同の中で、否応なしに中心的役割をはたすよう求められてきている。
第7に、憲法や教育基本法や労働法制の抜本的改悪反対のたたかいで先頭に立ち、また、中長期的な「21世紀初頭の目標と展望」実現と組織拡大をみずからの運動課題として提唱してすすめているように、日本の労働組合運動は事実上、日本社会の民主的改革をみずからの課題として取りあげ、取り組むようになっている。ブッシュ・小泉反動攻勢のもとで、日本資本主義の矛盾が行きつくところまで行ってしまった状況のもとで、労働組合はそうせざるをえなくなっているのであり、また、そうした課題をかかげるだけの自信と展望をもちはじめたのである。
こうして、日本の労働組合運動はいま、歴史的な転機ともいうべき重要な局面をむかえている。『世界の労働者のたたかい2006』第12集でもあきらかなとおり、アメリカの主導する覇権主義や市場万能主義に反対する運動は、中南米、アジア、欧州へと広がり、運動の本流となってきているが、いまやわが国でも、それが運動の本流として発展する可能性は十分成熟しているといえる。
昨年、連合執行部が改憲容認の統一見解をまとめようとして、加盟単産からの異議申し立てで断念せざるをえなかったように、また、憲法改悪反対や教育基本法改悪反対では、情勢の緊迫化とともにナショナル・センターや所属組合の違いを超えた広範な共同がひろがっているように、「戦争をしない、安全・安心の日本」への共同はすでに大きくすすみつつある。
全労連は、06年の第22回定期大会で、(1)戦争しない、戦争に参加しない日本をつらぬく、(2)人間らしく働くルールを確立し、格差・貧困を是正する、(3)労働組合の壮大な組織拡大・強化への挑戦、を主要課題としてかかげている。労働総研も、全労連の追求するこれらの課題にこたえて、06年度の調査研究・政策活動を積極的に展開していく必要があろう。
[III 2006年度事業計画]
1.研究所活動の新方向
労働総研の06年度は、憲法公布60年、憲法施行60年という記念すべき時期に調査研究・政策活動をおこなう時期にあたる。労働総研の調査研究・政策活動を、憲法を労働とくらし、権利擁護に活かす観点から追求することが求められている。
労働総研04年度定例総会の確認にもとづき、常任理事会のもとに研究所活動のあり方検討委員会を設置し、全労連の要請に積極的にこたえる調査研究・政策活動をすすめるために、検討委員会の提案にもとづく議論をかさねてきた。05年度定例総会でも議論の基本方向が確認され、06年3月に開催された05年度プロジェクト・研究部会代表者会議での議論をもふまえ、当研究所の調査研究・政策提言活動の基本を以下のように提案する。
労働総研は1989年12月11日、「労働運動の必要に応えるとともに国民生活の向上に資することを目的として」、「全国労働組合総連合との緊密な協力・共同のもとに、運動の発展に積極的に寄与する調査研究・政策活動をすすめる」ために設立された。設立15周年記念事業の成功を土台に、研究所をとりまく客観的な情勢の変化をもふまえて、当研究所の設立趣旨を今日求められる水準に具体化させるため、次のような諸点に留意して、ブロジェクト・研究部会等の改善と再編にとりくむ。
1)情勢の推移・変化にたいして鋭敏に反応しつつ労働組合運動が直面している調査・政策上の課題に留意した調査研究をすすめる(例えば、全労連の「恒常的な政策委員会」の活動や、各種審議会、労働審判制度、労働委員会、ILO代表などの課題に留意した活動)。
2)労働総研の主体的諸条件をリアルに認識し、限られた人的財政的資源を効果的に活用する方法を追究する。
3)労働総研の調査研究・政策提案活動は、研究者と運動家が共同ですすめる事業であることを明確にする。この点で、研究部会の設定・運営は、できるだけ運動課題と緊密にむすびついた形(たとえば全労連の各種対策委員会・闘争本部などと連携する形)ですすめる。
4)研究計画を重視し、研究計画にふさわしい人員構成にする。そのさい、青年・女性の参加を重視する。
5)可能な限り研究所の会員全体(さらにはひろく労働運動の活動家等)に開かれた研究所活動を組織化していく。また、研究成果は必ず会員に還元していく。
6)限られた財政は、調査研究・政策提案活動そのものの充実に重点的に充当していく。
2.プロジェクト・研究部会再構成の方向
上記の観点から、(1)研究所プロジェクト、(2)共同プロジェクト、(3)研究部会の3類型に再構成していく。
(1)研究所プロジェクト
このプロジェクトは、常任理事会が決定する重点研究課題にしたがって設置されるプロジェクト研究である。06年度の研究所プロジェクトは、(1)21世紀労働組合の研究(責任者:大木一訓代表理事、(2)新自由主義的展開に対する対抗軸としての労働政策の研究(責任者:牧野富夫代表理事)とする。研究プロジェクトを深めることによって、「共同プロジェクト」の調査研究・政策活動に寄与することをめざす。
(1) 21世紀労働組合の研究
当プロジェクトの研究課題は、21世紀初頭における労働組合運動の強化・発展の条件・要因を探求することである。そのため、全労連と共同で調査した「労働組合の活動実態と課題と展望」で蓄積した財産を活用すると同時に、国内における労働組合研究をはじめ、国際的な労働組合研究にも目配りした調査研究をおこなう。
(2) 新自由主義的展開に対する対抗軸としての労働政策の研究
当プロジェクトの研究課題は、「新自由主義」(弱肉強食)路線にもとづき、労働政策審議会が推進しようとしている、労働組合権能の破壊、解雇の金銭解決、ホワイトカラーイクゼンプションなど、労働基準法や労働組合法の骨抜きに抗して、憲法を土台とした「働くルール」を確立する労働政策研究をおこなうことである。
(2)共同プロジェクト
このプロジェクトは、全労連等の実践的要請に対応して、労働組合と共同でおこなうプロジェクト研究部会活動である。
(1) 労働組合トップ・フォーラム
運動を発展させるうえで、情勢を深く分析することが強く求められている。従来の政治経済動向研究部会の蓄積をいかし、労働組合トップ・フォーラムで、労働組合幹部と研究者との共同の討議・研究を定期的におこない、より突っ込んだ情勢分析をおこなう。
(2) 小さな政府問題研究
全労連での研究も深められ、労働総研としても一定の検討をすすめてきた経過もあり、その具体化のための検討をおこなう。
(3)研究部会
この研究部会活動は、研究所会員が常任理事会に研究計画を提出し、常任理事会の承認をえた研究計画にしたがっておこなう、研究部会活動である。研究部会は、できるだけ総合化していく方向をとるよう留意する。
この研究部会活動は、代表者1人と10人前後の運営委員で構成し、2年単位の研究計画を常任理事会に提出し、常任理事会の承認をえて活動する。運営委員の構成については、若手研究者、労働運動の活動家などの参加を配慮する。
研究部会活動は原則として公開とする。研究会開催のお知らせについては、『労働総研ニュース』や労働総研ホームページなどで迅速に広報する。
常任理事会は、申請された「06年度新規研究部会研究計画書」を審議した。その結果、06年度〜07年度における研究部会を、以下の8つと確定した。
(1)賃金・最低賃金問題検討研究部会(代表者:小越洋之助常任理事)=研究テーマ「成果主義賃金の現状と問題点―公共部門・民間部門の実態と対案の構築をめざして―」
(2)女性労働研究部会(代表者:川口和子理事)=研究テーマ「戦後の女性労働に関わる理論と運動の軌跡を検証し、今後の課題を考える」
(3)社会保障問題研究部会(代表者:唐鎌直義常任理事)=研究テーマ「地域社会の変容と住民生活保障」
(4)中小企業問題研究部会(代表者:松丸和夫理事)=研究テーマ:「中小企業労働組合運動の活性化で、経済の民主的発展、中小企業の持続的発展をめざす」
(5)労働者状態統計分析研究部会(代表者:藤田宏会員)=研究テーマ「労働者状態に関わる基礎統計の系統的分析と蓄積」
(6)国際労働研究部会(代表者:斎藤隆夫常任理事)=研究テーマ「各国の労働者のたたかいの情報分析、労働組合運動に関する知識の蓄積」
(7)関西圏産業労働研究部会(代表者:丹下晴喜会員)=研究テーマ「グローバル化時代・高付加価値経営下における賃金問題」
(8)労働運動史研究部会(代表者:山田敬男会員)=研究テーマ「産別会議から全労連へ―戦後労働運動の階級的潮流の探求」
3.調査研究活動活性化のための関連施策
「調査研究活動」の活性化のためには、各種の施策が必要であるが、さしあたり可能で、必要な施策として、次のような諸事業をおこなう。
(1)研究員制度の設立
調査・政策学校や労働組合トップ・フォーラムなどに協力してもらうボランティア研究員制度を設立する。
(2)研究例会・研究交流会
年度中2回程度開催する研究例会とあわせて、各研究部会間で共通する研究テーマにもとづく研究交流会の具体化を検討する。研究交流会での報告者には積極的に若手を起用することを重視し、研究活動の活性化をはかる。
(3)調査・政策学校の開催
「07年問題」といわれるように、「団塊の世代」が大量に退職をむかえ、組合の幹部・活動家も引退の時期をむかえる。こうした情勢のもとで、労働組合運動の伝統を継承し、運動活性化に役立つ調査・政策学校の開講を検討する。
(4)研究成果の発表
部会研究会等の研究成果は、これまで単行本の発行や研究所発行の『労働総研クォータリー』への掲載を中心発表してきた。今後は「ディスカッション・ペーパー」や『ブックレット』などによっても発表していくこととし、研究成果とともに理論上・政策上の論点についても敏速に明らかにして、積極的な議論を発展させていくよう努める。
(5)アニュアル・リポート
常任理事会は、研究成果全体を一覧できるような「アニュアル・リポート」を、対外的に発表する。
4.シンポジウム「ナショナル・ミニマム大綱について」
『ナショナル・ミニマム問題整理プロジェクト報告』で提起した、ナショナル・ミニマム実現へ向けての国民的共同の素材としての「ナショナル・ミニマム大綱」をめぐっての実践的なシンポジウム開催を検討する。
5.出版・広報事業
(1)アニュアル・リポート
(2)ディスカッション・ペーパー
(3)『世界の労働者のたたかい2007年版』
(4)『2007年国民春闘白書』
(5)『労働総研クォータリー』
(6)『労働総研ニュース』
(7) "Rodo-Soken Journal"
(8)『労働組合調査から見えてきたもの―こうすれば労働組合は活性化できる―』
[IV 研究所活動の充実と改善]
1.研究活動の充実
研究所活動を充実させるために、運動の要請に積極的にこたえた研究所活動をすすめる。研究所の調査研究・政策活動の全過程に全労連との緊密な協力・共同を強化する。
2.会員拡大
会員の高齢化に伴い会員が減少する中で、若手会員の参加の努力をつづけている。05年度中にも若手会員の拡大に努力してきたが、研鑚の場としても魅力ある研究所活動に努めるなどして、会員拡大に積極的にとりくむことが強く求められる。
会員から会員になってもらえる研究者を推薦してもらうなど、会員拡大に取り組む。
3.読者拡大
『労働総研クォータリー』は、特集によって大きな反響を呼び、単発的ではあるが注文の増加がある。単発読者が定期読者になってもらえるよう、また、会員としても参加してもらえるよう、企画・編集を魅力ある内容に充実し、定期読者の拡大に努力する。
4.地方会員の活動参加
全労連と共同で取り組んできた「労働組合調査」で、地方会員の研究所の調査研究活動への参加の端緒をつくりだした。ひきつづき、地方会員が研究所活動に参加しやすくするための検討をしていく。今後、中央・地方における各種公的委員会・審議会、労働者側委員などの公益委員として参加が予想される。それへの対応も準備しなければならない。
5.事務局体制の強化
労働総研の調査研究活動を機能的・効率的に推進する上で、総会・理事会の決定を具体化し、代表理事・常任理事会の適切な指導と援助のもとで活動する事務局の役割は重要である。事務局機能の効率的な運営をおこなうため、状況に応じた企画委員会、代表理事をふくむ拡大事務局会議の開催と事務局会議の定例化を定着させるとともに、事務局体制の強化を検討する。
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