労働総研ニュース No.236 2009年11月
目 次 |
政権交代と日本の税制 |
はじめに2009年夏の総選挙結果は、日本の政治史上、例のないものである。半世紀にわたって政権党だった自民党、その連立相手だった公明党が共に大敗して下野、代わって民主党を中心に社民党・国民新党が加わる連立政府が成立した。 新しい連立政府のもと、日本の税財政のあり方も、従来とは異なる新しい展開が予想される。今回の総選挙を通じて、各政党の選挙公約(いわゆるマニフェスト)に対する有権者の関心が高まったのも、新しい傾向である。民主党連立政権の政策が、このマニフェストを手がかりにしていることも、関心を高めるのに役立っている。 ここでは民主党が、「政権を担った暁に着手する」と公言していた「民主党税制抜本改革アクションプログラム」(2008年12月26日)を取り上げる。そこで示されている税制にかんする諸方針は、民主党が政権を得た以上、いずれ何らかの形で、実施に移されることになると思われる。しかし、まだ具体化の段階ではないので、この「アクションプログラム」の性格にかかわる問題を、いくつか拾い出してみたい。 1 新しい租税三原則、「公平・透明・納得」(1)「透明」原則 「アクションプログラム」のなかで、民主党は「納税者の立場に立つ」ことを明言している。納税者権利憲章の制定をうたっているのは、その顕著な例だが、同じ立場から「公平・透明・納得」という、新しい租税三原則を掲げている。この三原則のなかに、「公平」原則が掲げられているのは当然として、従来の租税原則には見られない、「透明」と「納得」という二つの原則を並べているのは特徴的である。 民主党の「アクションプログラム」では、これら原則のなかで、とりわけ「透明」原則に力を入れている。おそらく従来の自民党政権の「不透明」な政治手法が、民意を失う原因になったと考えているためであろう。したがってこれは、旧自民党政権の姿勢に対する批判であると同時に、民主党自身の自戒の姿勢を示しているように思う。 この「透明」原則を具体化しているのが、政治プロセス、すなわち意見集約過程の「透明」化である。たとえば「税制改革」についても、ともすれば見落されがちな「税制を決めるプロセス」について、それを改革するための具体案を提起している。 従来の自民党政権下では、政府税制調査会のような第三者的機関が、総理大臣の諮問に答申する形で、中長期の税制改革案を作成してきた。しかし長期政権が続くうちに、「法的な責任を負わない与党税制調査会が権限を持ち」、業界団体や各省庁から要望を吸い上げ、「インナー」と呼ばれる少数の有力議員が水面下で調整することにより、事実上、日本の税制を仕切っていた。その結果、政府税制調査会の存在意義は失われ、藤井裕久氏の言葉を借りれば、「ないも同然」の姿になってしまった。 民主党改革案では、「透明化」、すなわち責任の所在を明らかにするため、国税については、新に国会議員を構成員とする政府税制調査会を法制化するとともに、従来の与党税制調査会の方は廃止するとしている。また、従来の政府税制調査会も廃止し、代わりに新しい政府税制調査会の下に、専門家委員会を設置するとしている。 実際に鳩山内閣は、9月29日の閣議で、新しい政府税制調査会を内閣府に設置した。藤井裕久財務相を会長に、菅直人副総理兼国家戦略担当相と原口一博総務相が会長代行、各省の副大臣と政務官らで構成されている。ほかに社民、国民新両党からも政策審議会長がオブザーバーとして参加する。なお、専門家委員会の発足は、来年にずれこむことになりそうだという。 この新しい政府税制調査会の発足により、業界などに「戸惑い」を生じていると報じられている。例年9月下旬に、税制改正要望をとりまとめていた日本経団連や日本商工会議所は、今年は先送りを決めたという。日本鉱業協会会長は、「これまでは自民党の税に詳しい議員にお願いするパターンだった。民主党はだれが詳しいのだろうか。」また石油連盟会長は、「自民党とは、お会いして業界の実情を聞いてもらう機会があった。民主党にも意見交換の時間をつくってほしい。」自動車業界は、「エコカー減税の行方を懸念」、酒類メーカーは、「民主党のアルコール度数に比例した税制が気がかり」など。 藤井財務相は、新しい政府税制調査会では、特定業界の利益を意識したような議論は徹底的に排除すると述べている。果たして財界が、この新しい政府税制調査会に対し、どのようにしてパイプをつくりあげていくか、一つの見ものである。 ついでに、「透明化」について藤井財務相の発言、「全部テレビが入るという意味の公開は勘弁してほしい。事後のブリーフィングで正確に言うことが、公開の原則にこたえる道だと思っている。」 「アクションプログラム」では、地方税を扱う独自の機関として、地方六団体、総務大臣、新政府税制調査会の三者が、対等な立場で協議するという改革案を打ち出していて、「将来的には地方団体の主体的判断」に委ねるとしている。まだ具体化してはいないが、その限りで地方自治への配慮が見られる。 (2)「納得」原則 納税者の「納得」を、租税原則として打ち出したのも、「アクションプログラム」の目新しい主張といえる。シャウプ勧告では、「公平」原則のなかに、納税者の「納得」も含まれており、いわば一体のものとしてとらえていた。すなわち、「公平ということは、正しさについての一般国民の深くかつ広範な認識を、税制が満足させねばならないことを意味する」と。つまり税制それ自体のなかに、「公平」原則が実現されていなければ、納税者の「納得」や「信頼」は得られないという関係である。 その意味では、「アクションプログラム」が「納得」と「公平」を、別の原則としているのは、「納得」しがたいところである。いずれにせよ、「納得」原則のためには、「アクションプログラム」の「公平」原則が、国民が抱いている「公平観」にかなうかどうかが、カギとなることは疑いない。 (3)「公平」原則 ところが新しい三原則のうち、肝心の「公平」原則について、民主党の「アクションプログラム」では、それ自体の説明がほとんどなされていない。たとえば、「アクションプログラム」のなかから、「公平」という用語が使われているものを拾い出してみると、次の通りである。 「公平で国民が信頼し納得する税制」、「消費税の特性である水平的な公平性」、「租税特別措置は、税負担の公平の原則に対する例外的措置」、「政府が国民になんらかの負担を課したり、便益を与えたりする際に、最も重要なのは公平であること…」、「社会保障制度が国民にとって公平に運営されていると信頼されるためには、正確な所得把握が必要不可欠である」等々。 これらを見ると、民主党が理解している「公平」原則とは、いわゆる「水平的公平」を指す場合が多いように思われる。しかし「公平」という場合、「水平的公平」だけでは足りず、さらに「垂直的公平」を満たして、はじめて真の意味の「公平」といえるわけである。この点について、民主党がどのような理解をしているかは分からない。わざわざ「公平、透明、納得」という新しい三原則を掲げた以上、それにふさわしい説明が必要と思われる。 2 シャウプ勧告税制以来の「公平」原則(1)総合累進制から「フラット化」へ そこで日本の税制改革の原点、シャウプ勧告税制に立ち戻ってみる。シャウプ勧告では、「公平」の理念を税制改革の基本としており、「公平についての、ある構想を自分の指針として持っていない限り、税制使節団は途方に暮れるだろう」と述べていた。 そのシャウプ勧告の「公平」理念は、「応能負担」にあり、具体的には所得税の総合累進課税を意味していた。そのさいシャウプ勧告について、注意すべきことがある。それは、「脱税」と「合法的税逃れ」を峻別し、それぞれの対策を用意していることである。 当然、「脱税」を許さない仕組みも工夫しているが、それよりも「合法的税逃れ」、すなわち、負担できるのに負担しない制度、つまり総合累進制に対する特例措置をターゲットに、それらの廃止に必要な措置を勧告していた。 シャウプ勧告で「合法的税逃れ」の典型とされたのが、「キャピタル・ゲインが全額課税でなく、半額しか課税されないこと」と「利子などの分離課税」であった。「ある人々が平然と自己の正当な税負担額を合法的に回避していることが知れるのは、ある人々が非合法的に脱税していることが知れるよりも、一層納税モラルに対して有害となる」というのが、シャウプ勧告の基本的認識であった。 しかしシャウプ勧告税制に対する修正の要求もまた、この点に集中されることになった。金融業界はじめ財界からの修正要求を、アジア情勢の変化を受けたアメリカの政策転換が後押しする形になった。 「資本蓄積」さらには「国際競争」などを理由に、シャウプ勧告税制に対する修正、つまり所得税の「総合累進制」の骨抜きが進む。その後も自民党政権が続くなかで、「総合累進制に対する特例措置」が温存される。そして1980年代以降、消費税導入から今日に到る経過のなか、「皆が公平に負担」という「フラット化」の理念が、政府税制調査会を旗振りに、流行の理念になる。いわば、「公平」理念の変質である。 これらの動きをとらえて、加藤睦夫(立命館大教授)は次のようにまとめている。「大型間接税の創設と、所得税の総合累進課税の放棄。見るも無残な税制の改革だ。…総合累進とは、所得の大きい人ほど、より高い税率で負担するという原則である。…消費税は、そのことにまったく逆行する税制なのである。そのような考え方の基本にあるのが、あらゆる税を貫いた同率の税負担(フラット化)であり、…それこそが税制の国際化をあらわすものといわなければならない。」谷山治雄(税制経営研究所所長)は、この「フラット化」をやむを得ないとしている論者の主張に対し、「敗北の租税論」という名前を与えている。 (2)「アクションプログラム」と「フラット化」理念 民主党の「アクションプログラム」のなかで強調されているのは、「時代や社会の変化に対応」する必要である。その場合、「時代や社会の変化」は「国際化」を意味し、それに対応する今様の「公平」理念、すなわち「フラット化」を当然としているように見える。 そのことを端的に表わしているのが、「総合累進税制」の扱いである。 「アクションプログラム」のなかでは、「累進性の強化」を、あっさり「実効性に乏しい」と、切り捨てている。理由に上げているのが、「グロリゼーションの進展」である。すなわち、「納税者(人や企業)は、担税力の高い者ほど、納税する場所さえ、自ら自由に決めることができる。」したがって「国が囲い込むことができない」と述べている。 こういう主張は、売上税を提案した中曽根内閣、消費税を導入した竹下内閣以来、自民党政権下の政府税制調査会答申において、繰り返されてきているものである。 たとえば1986年の政府税調答申、「最近における経済取引の国際化、自由化の著しい進展に即応し、国際性の視点にも配慮」ということから、「所得税の限界税率の累進が強すぎたり、その水準が高すぎたりする場合、…経済活動の海外移転や人材の海外移転を招くことになりかねない。高所得者といえども限界税率の水準には、おのずと限度があると考えられる。…最高税率を所得税と個人住民税を合せて60%台に引き下げる。…所得税については50%とする。」 その後、実際に消費税の導入や税率引上げが、所得税の最高税率引下げとセットで行われてきた結果、所得税の最高税率は37%にまで引き下げられている。そのため、2000年政府税調答申では、「現行の税率構造を国際的に見ると、所得税の最高税率は主要国の中で最も低く、住民税を合わせた最高税率は遜色ない水準となっている。」 したがって「累進税制」について、「アクションプログラム」に現れている民主党の立場は、自民党政権のそれを踏襲したものにすぎない。 「累進税制」と似たように扱われているのは、「総合課税」である。「アクションプログラム」では、「民主党は本来、総合課税が望ましいと考えるが、当分の間は、金融所得については分離課税とした上で、損益通算の範囲を拡大していくことが適当である。」 「本来、総合課税が望ましい」と考えているなら、政権交代を機に、その真面目を発揮し、実現をめざすのかと思いきや、どうも煮え切らない態度である。「当分の間」と言っているのも、決まり文句風である。これまでの日本税制は特例の歴史であり、それらは「当分の間」の繰り返しによって、延長されてきているからである。 また、「証券税制については、一体課税の環境が整備できるまでの間、現行の優遇税制を延長する」という。これも明らかに、旧自民・公明連立政府の方針を継続するものである。これらはつまり、民主党の「抜本税制改革」の対象から、金持ち優遇税制の改革が、すっぽり抜け落ちているということである。 「税金を高くすると、金持ちは日本から出て行く」という言い草は、石弘光(元政府税制調査会会長)なども、好んで口にしているところだが、金持ちとは税金が少し高くなっただけで、祖国を見捨てるような人達なのだろうか。かつてアダム・スミスは、税金を払うことで、人は自由になると説いた。しかし今、当然払うべき税金を逃れることが、その人を自由にすると言うのだろうか。ともあれ、こんな話、子どもたちに聞かせられるだろうか。 日本の深刻な財政状況からすれば、増税は必至と思われている。その際、まず財力のある人々が、それに応じた重い税負担を担うのは、むしろ当然ではないだろうか。民主党は「納得」に力を注ぐようだが、あれこれ口上を述べ立てるよりも、本来の「応能負担」の税制を行いさえすれば、シャウプさんが言われるように、おのずと税制に対する一般国民の「納得」が得られるのではないだろうか。 3 「アクションプログラム」の税制改革案から(1)所得再分配機能の回復策 所得税の累進税率に手をつけない代わりに、提案しているのが、所得控除の税額控除への転換である。所得税には、基礎控除、配偶者控除、扶養控除など、様々な所得控除制度があり、それら所得控除の合計額が、所得税の課税最低限となっている。 「アクションプログラム」の説明によれば、「現行所得税の所得控除制度は、結果として、高所得者に有利な制度となっている。なぜなら同額の所得を収入から控除した場合、高所得者に適用される限界税率が高いことから、高所得者の負担軽減額は大きくなる一方で、低い税率の適用される低所得者の実質的な軽減額は小さくなるからである。」これに続けて扶養控除38万円を例に、「高所得者が10万円を超える減税になるのに対し、低所得者では2万円の減税にもならない」と計算してみせている。 これは限界税率による計算をあてはめた上で、単純に比較したにすぎない。所得税は超過累進税率なのだから、扶養控除の38万円には税率ゼロが適用される。したがってこの38万円の分は、所得の大小にかかわらず課税されない、つまり同じ減税額である。 この所得控除と税額控除の関係についても、シャウプ勧告で論じられている。扶養控除は、以前には税額控除の方式をとっていたのを、シャウプ勧告により、税額控除から所得控除に改められたものである。したがってシャウプ勧告では、なぜ税額控除を、所得控除に改めるか、その理由について、ていねいな説明が行われている。 その第1の理由、基礎控除が所得控除制をとっているから、扶養控除も同じ控除方法にする方が、納税者にとって便利である。第2の理由、所得控除の方法は、所得額が増えるほど、扶養者数によって生じる所得税額の差を大きくする。したがって高所得階層では、大世帯は小世帯より税負担が少なくなり、より公平になる。税額控除では、その差は同じだが、所得控除では、差が開く。 これらの説明のあと、シャウプ勧告は、「アクションプログラム」が提示しているのと同じ主張を取り上げ、それを次のように斥けている。「所得控除の方法は、扶養者数が同じである場合、扶養者1人当りの税の軽減割合が、低所得者より高所得者の方が大きいことから、税額控除方式の方が、所得控除方式よりも、より累進的(公平の意)であるという主張を行う者もある。しかし所得控除にしたために、所得税がわれわれを満足させるほど累進的でなくなるとしたら、このような欠点は税率を少し変更することによって、容易に正すことができる。」 これを読むと、「税額控除」方式を、なにか所得税を「公平」にする切り札であるかのように説く「アクションプログラム」の提案は、ただ所得税の「累進税率」から、人の目をそらしたい一心からのようにも見えてくる。 (2)消費税 消費税については、まず「逆進性の緩和」をうたっている。しかし逆進性を緩和するため、ヨーロッパ諸国などで実施されている複数税率の導入は、とらないという。 その理由は、消費税が税率に差のある物品税のようになり、「消費税の特性である水平的公平性を大きく損なう」からだという。また、複数税率にすると、たとえば食料品に軽減税率を適用する場合、なにが食料品かを決めるのが困難なこと、さらには消費税の課税ベースが、それだけ小さくなり、税収を確保するため基本税率を高くしなければならないことも、複数税率を採用しない理由に上げている。これらの主張は、2000年政府税調答申などで展開されてきた議論と変わらないものである。 民主党の税制改革案は、「所得控除から手当・税額控除へ」を売りにしているが、消費税についても、その逆進性緩和策になるとして、「給付付き消費税額控除」の導入を提案している。これは「年間の基礎的な消費支出にかかる消費税相当額を、一律に税額控除し、控除しきれない部分については、給付をするもので、これにより消費税の公平性を維持し、かつ税率をできるだけ低く抑えながら、最低限の生活にかかわる消費税については実質的に免除することができる。」この方式は、カナダでやっているのを、日本でもということで、民主党としては合意しているという。 消費税を増税して、福祉の財源に当てるという方策を、「回り道」と評したのはシャウプさんであるが、「回り道」の先に待っているのは、「税率をできるだけ低く抑えながら」と弁明しながらの税率引上げである。もっとも民主党は、消費税増税の意図をかくしてはいない。消費税増税のためには、消費税を国民が「納得」し、「信頼」される税にする。そのためには、「使途を明確にする」、「制度の透明性を高める」などの対策と並べて、この「給付付き消費税額控除」を提案しているのである。 (3)相続税 相続税については、課税方式を遺産課税方式に転換することが提案されている。もともとわが国の相続税は、遺産課税方式であったが、やはりシャウプ勧告がこれに大きな変革をもたらし、1950年に、遺産総額に関係なく遺産を取得した各人ごとに、それぞれ課税標準および税額を算定する遺産取得課税方式となった。 この方式は、財産取得者が生涯を通じて受け取る相続、遺贈、贈与をすべて累積して、相続税を課税するもので、この方式の採用により、相続者が多数になるほど、遺産の分割を促進し、富の過度な集中を抑制するという、資産再配分機能がある。 また、これにより遺産取得者の担税力に応じた課税ができるので、応能負担の原則にかない、公平とされてきたものである。そのほか財産形成に貢献した配偶者に対する控除、未成年者控除など家族の実情に配慮した各種の控除を設けることで、小財産に対する負担軽減、遺族の生活保障がはかられている。その後1958年に、相続税は現行の「法定相続分離課税方式による遺産取得課税方式」となった。 民主党「アクションプログラム」では、遺産課税方式に転換する理由は、相続財産が形成されたのは社会のおかげだから、その「富の一部を社会に還元する」のだという。したがって、「その税収を社会保障の財源」とすること、すなわち相続税の社会保障目的税化が示唆されている。 そういう考え方に関連するものとして、『税理』11月号の座談会における民主党の古川元久議員の発言がある。「ある税の専門家から、遺産課税にして控除をなくし、1割の相続税を課税することにしたら、5兆円近い税収が上がるという話を聞いたことがあります。これが事実なら、これを高齢者医療の財源にするのも一案だと思います。」 もともと相続税の基礎控除額は、「中間層の生活基盤の形成を阻害しない水準」という考え方により、引上げられてきた。それが2000年の政府税制調査会答申から、基礎控除額の見直しが強調されるようになる。「仮に相続税の課税される層が広がったとしても、その負担が軽度であれば、直ちに生活基盤の形成が阻害されるとはいえない」と。 民主党の考えは、それを一歩進めるものといえる。もし「ある税の専門家」の提言にしたがって、相続税の基礎控除をなくすとなれば大問題で、一部の資産家に限られていた相続税を、一挙に大衆課税に転換するという話になる。しかも一律10%となれば、まさに「フラット化」そのものである。福祉目的といえば、聞こえは良いが、お金に色はついていない以上、新たな増税の口実に過ぎないと思われる。 (あんどう みのる・会員・静岡大学名誉教授)
労働総研2009年度第1回常任理事会は、全労連会館で、2009年10月3日午後1時半〜5時まで、大木一訓代表理事の司会で行われた。 冒頭の研究会は、丸山重威関東学院大学教授の「鳩山新政権をどう見るか」の報告を受け議論した。 Ⅰ 報告事項大須眞治事務局長より、1)「地域政策検討」プロジェクトなどの共同プロジェクトの進行状況について、2)若手研究者研究会の記者発表「大学生の労働組合観について―アンケート調査から見えるもの―」(10月1日)について、3)研究成果の発表・出版・広報事業について、4)産別記念・労働図書資料室について、5)全労連役員との懇談(9月15日)についてなどが報告され、討議の結果、了承された。 Ⅱ 討議事項
|