労働総研ニュース No.237 2009年12月
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世界各国で高次元の国民共同行動を |
労働運動総合研究所(労働総研)は、1989年12月11日、「労働運動の必要に応えるとともに国民生活の充実向上に資することを目的に」設立されました。今年、設立20周年を迎えるにあたり、設立当初の代表理事である、黒川俊雄・戸木田嘉久両顧問に寄稿していただきました。
労働総研設立20周年を迎えて、設立当初の代表理事であった私は感慨無量です。86歳を超えた私より若い研究者や活動家との「グローバル化とナショナル・ミニマム研究会」の成果を共著として公刊すべく悪戦苦闘中です。 2008年米国発金融危機後の現在、世界は単なるリセッションではなくダウンターンに直面しています。09年6月ILO総会は世界各国の政労使代表の満場一致で『グローバル・ジョッブス・パクト』(仕事に関する世界協定)を採択し、その具体化によって「雇用と社会保護をあらゆる経済・社会政策の中心に据える総需要刺激策」を追究していく方針を決めました。ILOはすでに03年の総会で採択した『雇用関係に関する決議』の中で「被用者であるなしにかかわりなく、すべての働く人々に適用される広義の労働者」が「雇用関係に伴う保護」を得られるようにし、「社会保障」よりもっと広い範囲で適用される「社会保護」をシステム化することを決めました。 すでにEUは01年に「グリーン・ペーパー」を、02年に「ホワイト・ペーパー」を公にして、「企業の社会的責任」(CSR)を「責任ある行動が持続可能な事業の成功につながるという認識を企業が深めて、社会・環境問題を自発的にその事業活動とステークホルダー(利害関係者)との相互関係に取り入れる」としていましたが、ILOは、07年の報告書で、「経済」を加えて「持続可能な発展の三要素である経済、社会、環境が不可分に結びついているのは仕事の場においてであるから、グローバル化が進む中で、持続可能な発展のために必要になってくる計画を仕事に根づいたものとして『ディーセント・ワーク』(働きがいのある人間らしい仕事)を実現する」ことになりました。そして第96回総会で、上述の三要素の「持続可能性の間の強力な相乗効果をまだ構築するようになっていない」として、広義 の労働者をはじめとするステークホルダーが「個人消費」を刺激する「ディーセント・ワーク」の実現によって雇用創出だけでない良質な仕事創出を目標にコンプライアンスを超えた取り組みで企業を動かして企業の自発的なイニシアティブを引き出す法制化をめざす世界各国の国民共同を進める高次元の行動を労働組合が組織することを求められるようになっています。 いまこそCSRの可能性を現実性に転化させることが重要な課題になっているのではないでしょうか。 (くろかわ としお・慶応義塾大学名誉教授・桜美林大学名誉教授)
労働総研20周年おめでとうございます。私は、創立準備に参加し、10周年まで代表理事でしたから、とりわけ感無量なものがあります。 (1) 労働総研は、同時期に結成された全労連と「密接な協力・共同のもとに、運動の発展に寄与する」ために設立されました。だが、10周年当時、調査研究はすすんだものの、「政策活動」は不充分でした。小林洋二全労連議長からは、「実践的研究に期待」というメッセージがよせられました。 しかし、それから10年、昨今の労働総研の活動は、全労連との協力・共同もつよまり、研究調査を基礎に、「実践的な」「政策活動」への展開がすすんできています。その成果の公開がしばしば新聞紙上にも紹介され、労働総研のアイデンティ・ティが広く認知されてきました。うれしいことです。 (2) 「労働総研、アニュアル・リポート〜2008年度」によると、中心プロジェクト「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」を軸に、総じて各研究部会もこの中心課題との関連が視野にいれられています。 また、それぞれのプロジェクトや部会研究で、全労連と傘下単産や地方組織、全商連、「いのちと健康を守る全国センター」などとの連携もすすみ、研究の政策化や運動との結びつきの強化が注目されます。 (3) それから、「アニュアル・リポート〜2008年度」のなかで、私なりにとくに関心をおぼえた二、三のことを、参考にあげてみたいと思います。 第一に、労働時間研究部会が3年ぶりに「労働時間・健康問題研究部会」となり、活動を再開されたことです。私は元の研究会が責任者を中心に強力なメンバーをもって、すばらしい研究成果をあげてこられたのをよく知っています。この労働時間研究の実績を基礎に、健康問題をくわえたユニークな研究会の発足は、労働総研ならではの発想と思いました。 第二に、労働者状態・統計分析研究部会では、『国民春闘白書』を統計ハンドブック面で充実させるために、労働者状態や大企業の統計分析を強化するとのこと、楽しみです。 第三に、20周年記念として、若手研究者と組合調査部に奨励賞表彰事業が準備された。若手研究者育成と会員拡大、組合調査部との連携強化は、労働総研発展のカナメか―。 最後に、30周年目の労働総研の発展を楽しみにしております。 (ときた よしひさ・立命館大学名誉教授) 労働総研の牧野富夫代表理事と木地孝之研究員、藤田宏常任理事は、11月18日、厚生労働省記者クラブと三田クラブにおいて、「経済危機打開のための緊急提言・内部留保を労働者と社会に還元し、内需の拡大を!」を発表しました。以下の文章は記者発表の全文です。 労働総研2009年度第2回常任理事会は、全労連会館で、2009年11月14日午後1時半〜5時まで、大木一訓代表理事の司会で行われた。 冒頭の研究会は、伊藤圭一全労連調査局長から「公契約適正化運動について」の報告を受け議論した。 I 報告事項 大須眞治事務局長より、1)「地域政策検討」プロジェクトなどの共同プロジェクトの進行状況について、2)研究部会運営委員メンバーの追加について、3)「2010国民春闘白書」の発行と、それに関連して「経済危機打開のための緊急提言」の記者発表(11月18日)について、4)産別記念・労働図書資料室について、などが報告され、討議の結果、了承された。 II 討議事項
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