（もりしま　わたる・会員）

2011年度第３回常任理事会報告

　労働総研2011年度第３回常任理事会は、全労連会館で、2012年３月31日午後１時〜２時まで、小越洋之助代表理事の司会で行われた。

１．報告事項

　藤田宏事務局次長より、「【2012年春闘提言】賃上げと雇用条件改善で超円高･デフレ不況の克服を―内部留保をわずか3.94%活用すれば可能」(１月19日)、「【試算】消費税10％で、GDP2.5％低下、雇用100万人以上減少―大企業に有利、低所得者と中小企業を直撃―」(２月20日)の発表について、労働総研ブックレットの進行状況について、および前回常任理事会以降の研究活動や企画委員会・事務局活動などについて報告され、承認された。

２．協議事項

（１）事務局次長より、入会の申請が報告され、承認された。

（２）牧野富夫代表理事よりプロジェクト・研究部会代表者会議の基調報告について提案され、討議の上、承認された。

　また、事務局次長より、プロジェクト・研究部会代表者会議の進行について、および研究所プロジェクトの最終報告、各作業部会最終報告のまとめの日程が提案され、承認された。

（３）事務局次長より今後の総会までの日程について、６月２日に第１回理事会を、８月４日に第２回理事会および2012年度定例総会を開催することなどが提案され、承認された。

（４）大須眞治事務局長より、定例総会に向けた人事の進め方について、人事委員会での議論が報告され、承認された。

研究部会報告

・中小企業問題研究部会（公開・２月17日・３月26日）

　２月17日は、「アメリカ中小企業視察報告」のテーマで公開開催し、中同協政策局長の瓜田靖氏（訪米視察団事務局）より報告を受けた。瓜田氏は、訪米中に撮影した訪問先などの写真や収集したデータをプロジェクターで映して解説したあと、準備した「報告ノート」（全13ページ）にもとづき、（１）中小企業庁の歴史と定義、（２）中小企業の現状、（３）ダイナミズムと政策理念、（４）政策の体系と特徴、（５）日本の憲章と政策への示唆などを詳細に報告した。

　３月26日は、「消費税増税による日本経済（中小企業）と雇用への影響」について公開開催し、労働総研研究員の木地孝之氏より報告を受けた。木地氏は『労働総研ニュース』No..264･265に発表した影響試算に基づき、（１）消費税の本質＝不公平で弱い者いじめ、（２）消費税10％によるダメージ＝消費減14兆円減、生産21兆円減、GDP12兆円（2.53％）減、就業者157万人減など、とりわけ中小企業分野の打撃が大きいことを強調した。産業連関表による分析について、まんがで解説した。

・賃金・最賃問題研究部会（２月21日）

　「2025年を展望した賃金政策」をテーマに伊藤圭一氏が報告した。賃金破壊が深まるなで、社会的に波及力を持つ賃金闘争をどう再構築するか。そのための産別主導の企業横断的な闘い、生活保障賃金と世帯形成期要求の設定、男女・雇用形態別差別是正・均等待遇の闘い、水準と体系を結合した職場からの取り組み、税と社会保障による賃金の補完、最賃制闘争と公契約適正化運動の強化、そのなかでの地域における企業横断的な業務・職種の相場賃金形成への取り組みなど、多面的課題が提起、検討された。

・女性労働研究部会（２月22日）

　経労委報告について上田裕子さんと小林宏康さんが報告・問題提起を行った。「企業の危機」を強調し「人事・賃金制度の見直し―賃金の個別化」・賃上げ拒否等で総額人件費の抑制・企業利益追求、そのための労組の変質・労使一体化、非正規労働者の待遇改善も拒否、ワーク・ライフ・バランスは生産性向上が前提条件などの特徴が明らかにされた。これは差別是正や人間らしい働き方を求める女性労働者の要求に逆行するもので、たたかいを強めなければならないことが話し合われた。

・労働時間・健康問題研究部会（４月６日）

　研究所プロジェクト時間的ゆとり作業部会中間報告案「労働時間短縮で日本社会を変えよう」の報告、論議をした。このなかでは、余暇がなければ人間としての発達が望めず、貧困化は進行するだけだという観点で人生を楽しめるようにしよう、労働組合活動や政治活動にも参加できるようにしよう、という点を重視した方がよいのではないか。また若者の間に年収200万での暮らしに半数近いものが満足している統計などが出ていることとの関係などを叙述するなどの補強が必要であろうなどの意見が出た。

・労働組合研究部会（４月21日）

　1951年から86年まで合化労連の中枢にいた塚田義彦さんに、総評労働運動について話してもらった。「ニワトリからアヒルへの転化」、高野・太田対決、「日本的労働組合主義」、職場闘争論などの評価、大手組合の右傾化と労働戦線の再編、化学労働運動の動向などで活発な質疑があった。50年代から60年安保闘争・春闘の本格化への総評運動の前進はなにによってもたらされたのか、その総評運動が70年代後半に見せたもろさはどこに起因するのか。

・関西圏産業労働研究部会

　2011年９月24日は、「書評：浪江巌『労働管理の基本構造』」「愛媛における連合加盟の労働者像―愛媛県労福協アンケート調査から」、11月19日は、「フランスの政治・社会状況について」「書評：浪江巌『労働管理の基本構造』」、2012年１月21日は、「日本の労働運動の現状をどうみるか」、「労働総研共同研究についての報告」、３月３日は、「ユーロ圏における財政と金融の問題状況について」「外国人労働者への労務管理−自動車部品メーカーを例に−」をテーマに開催した。